研究領域
1.証券投資論
- 証券市場分析
メインの研究領域です.テーマは「市場が情報を反映して価格を形成するプロセス」です.私にしてみれば,証券市場は単に観察対象でしかありません.たまにふざけて自分の研究領域を「株で儲ける方法」と言っていますが,実際には証券投資にはあまり関心はありません(先立つものがないという話もある).
人が自己の利益を目的として(いわゆる合理的経済人の定義です.環境問題やボランティアなど,この概念を超えた問題についてはこの際置いときます.)行動する様子を観察するには,証券市場は最もふさわしいと言えます.- 効率的市場仮説 (2008/5/20更新)
- アノマリー(Anomalies) (2008/5/20更新)
私はこの領域の勉強がしたくて,大学院に行き(モラトリアムも多少はあったけどね),それがきっかけで大学の教員になる道に進みました.
で,現在(2013年)は,アナリスト予測情報,IPO(株式新規公開)の分析を中心に研究しています.
また,最近では投資家の心理をも対象とした「行動ファイナンス」が新たな領域となりつつあります.効率的市場仮説やアノマリーの1つの解釈として注目されています.証券市場の研究をしていると気になるのは,市場の休日.以前には土曜日も営業していましたし.そこで,ここにメモを残しておく次第.国民の祝日以外での休場日は,
- 1959(昭和34)年4月10日:皇太子明仁親王の結婚の儀
- 1989(平成元)年2月24日:昭和天皇の大喪の礼
- 1990(平成2)年11月12日:即位礼正殿の儀
- 1993(平成5)年6月9日:皇太子徳仁親王の結婚の儀
- 2020(令和元)5月1日:剣璽等承継の儀(天皇の即位の日)※祝日法によりこの年のみ4/30と5/1も国民の休日となった
- 2020(令和元)10月22日:即位礼正殿の儀
- 2020(令和2)10月1日:東証システム障害
皇室がらみのイベントも祝日扱いとなるので,市場も休場となります.ただしイレギュラーなので,メモしておかないと後日何でデータがないの?と悩んでしまいます.
唯一の例外は,システム障害で終日全面停止し,結果的に営業日でなくなった2020年10月1日です.
日曜祝日以外では,毎年のことですが,12月31日から1月3日までの年末年始休場(年によって大納会の日は異なる).それと土曜日.昔は土曜日も学校や会社はあったんだよ,というと学生はびっくりしますね.証券取引所では以下のような経緯で導入されています.- 1983(昭和58)年7月まで第3土曜日休場(いつからかは未確認2002/9).
- 1983(昭和58)年8月から1986(昭和61)年7月まで第2土曜日休場.
- 1986(昭和61)年8月から1988 年12月まで第2,第3土曜休場.
- 1989(平成元)年1月は最終土曜のみ営業.
- 1989(平成元)年2月以降土曜休業
2006年にはライブドアショックで東証が取引時間を縮めるという事件も起こりました.
- 2006(平成18)年1月18日全面停止
- 2006(平成18)年1月19日から4月21日まで30分短縮(13:00開始→12:30開始)
ライブドア株はさらに取引時間を短縮されていましたが,これは省略.
東証では,単なるシステム障害に起因する全面売買停止が2005年11月1日に発生しています.午前中の取引が停止するという事態となりました.終値こそありますが,前場のデータがないので分析時には注意したいです. - 新規公開株の価格に関する研究
新規公開(IPO)時の公開価格形成と公開後の価格変動に関する研究をしています.
- デリバティブ
特にデリバティブについて研究している訳ではないのですが,講義を担当する関係上,勉強を続けています.
2.会計情報と株価
- 会計を意思決定有用性アプローチの立場で捉え,会計システムから提供される会計情報が利害関係者の意思決定に役立っているかを実証研究によって明らにすることにより,会計情報の有用性を証明することに目的を置く研究領域です.実証のためのデータは利害関係者達の行動を映す鏡である株式市場です.
自身は会計を専門とはしていません.また,会計情報は投資家の利用する情報の一種と捉え,会計学者がこの研究に対する姿勢とは一歩距離を置いているつもりでもあります.しかし,会計情報はその仕組みからして最も信頼しうる情報であり,わが国においても多くの研究が行われています.これら実証分析を分類すると以下の3タイプになります(大塚宗春,1987,「株価・会計情報研究の方法と問題点」,『会計』,455-472.).
- 情報内容の研究
投資家の意思決定を反映する株価の変動を会計情報との関連性から会計情報が株価の変動の決定に限界情報として貢献しているかどうかを明らかにする. - 会計規制の経済的効果の研究
各種の会計規制が経済的効果を有しているかを明らかにする.
例:取替原価情報,セグメント会計,オイル・ガス会計,インフレ会計,証券取引法改正による売上高開示,リース資本化会計,研究開発費会計,外国為替会計など - 会計処理方法の自発的変更の効果の研究
例:減価償却方法の変更(定額法,定率法),棚卸資産原価配分方法(先入先出法,後入先出法),投資税額控除法(繰延法,一括法)
論文は多いのですが,この領域に関する学術書は少なく,絶版となっているものもあります.2008年現在,図書館などで参照可能な書籍として,以下のものがあります.
- 若杉 明 編著,『会計情報と資本市場』,1984年,ビジネス教育出版社.
- 國村道雄,『現代資本市場の分析』,1986年,東洋経済新報社.
- 石塚博司 編著,『実証 会計情報と株価』,1987年,同文舘.
- 桜井久勝,『会計利益情報の有用性』,1991年,千倉書房.
- 後藤雅敏,『会計と予測情報』,1997年,中央経済社.
- 音川和久,『会計方針と株式市場』,1999年,千倉書房.
- 石川博行,『連結会計情報と株価形成』,2000年,千倉書房.
2006年には日本の実証会計研究が25年を超えたことを記念して本がまとめられました.これまで発表された実証会計の論文から代表的なものが集められています.収録された論文以外にも3つのサーベイ論文が新たに収録されているのでこの分野での研究を体系的に知るには適しています.
- 石塚博司編 ,『実証会計学』,2006年,中央経済社.
この分野は証券市場分析の立場からすると,上記で紹介している効率的市場仮説の準強度の効率性に関するテストとして捉えることもできます.
- 情報内容の研究
3.企業財務論
- 企業の資金調達,運用に関する研究です.講義を担当していることもあって本当は真剣に研究する必要があるのでしょうが,あまり腰を入れて勉強していないありさまです.少しづつ成果を出そうとは思ってます.
4.コンピュータリテラシ
- 仕事柄,PCを使うことが多く,そのおかげで最初の職に付くことが出来ました.当時からユーザー教育を担当しており,現在もその延長で非常勤でコンピュータリテラシの講義を行っています.でも大学入学前のPC教育が進むにつれて,必要性も減ってゆくものと思います.そうなる前に1つくらい成果を残そうかなということで,本を書きました. 阿部圭司,『Excelで学ぶ統計解析 会社の数字を知って伸ばす本』,ソシム,2006年,209p,ISBN 4-88337-498-X. 阿部圭司,『Excelで学ぶ回帰分析』, ナツメ社, 2004年,239p,ISBN 4-8163-3754-7.
5.金融教育(金融リテラシー)
- ゼミでの教育の延長で金融教育の分野にも関心を持つようになりました.1つは証券会社との協同で2006年から2011年まで実施した資産運用塾という学生主体のセミナ開催です.これと並行して本を共著で書きました.また,学生を対象にアンケートを実施し,研究論文をまとめたりしています.
阿部圭司・小澤伸雄・木下康彦,『ファイナンシャルリテラシー(第3版)』,同友館,188p,2019年,ISBN 978-4496054426.
阿部圭司・小澤伸雄,『新版ファイナンシャルリテラシー』,同友館,175p,2015年,ISBN 978-4-496-05126-5.
阿部圭司・小澤伸雄,『ファイナンシャルリテラシー』,同友館,162p,2011年,ISBN 978-4-496-04775-6.阿部圭司・小澤伸雄・木下康彦,「大学生を対象とした金融リテラシーの項目反応理論に基づく検討」,『高崎経済大学論集』,Vol.63,No.1,2020,pp1-15.
阿部圭司・小澤伸雄・木下康彦,「大学生に対する金融リテラシーに関する研究−新入生と在学生の比較を中心として−」,『高崎経済大学論集』,Vol.62,No.3&4,2020,pp1-18.
阿部圭司・小澤伸雄・木下康彦,「高崎経済大学学生の金融リテラシーに関する研究−金融リテラシー調査(2016)に準じた調査結果−」,『高崎経済大学論集』,Vol.62,No.2,2019,pp1-21.
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