エコユニット『SATOYAMA環境システム研究室』の活動
研究フィールド 研究方法 活動報告
エコユニットとは?
当ゼミナールでは、3年生の前期に全員がeco検定を受験しています。2014年度末までに、47人のエコピープル(eco検定合格者)を養成してきました。エコピープル支援協議会では、複数のエコピープルが集まって環境に配慮した活動を行う団体を『エコユニット』として登録し、ユニットの情報発信や交流の場を提供する事業を行っています。当ゼミナールは、2011年から『SATOYAMA環境システム研究室』というユニット名で登録し、様々な活動を展開しています。
エコユニット『SATOYAMA環境システム研究室』の登録情報はこちら (エコピープル支援協議会へのリンク)
自然の恵み・・・『生態系サービス』
私たちは生態系から様々な恩恵を享受しています。私たちの生活に必要な食料、水、木材、燃料などの資源は、生態系における動植物の再生産プロセスを通じて供給されます。また、このプロセスは気候変動の緩和や洪水の抑制にも寄与し、私たちの暮らしを安定化させてくれるのです。さらに、豊かな自然のもつ審美的な魅力は、時として私たちに精神的な安らぎさえも与えてくれます。自然の恵みであるこのような無償の『生態系サービス』を、私たちはこれからも享受し続けることができるでしょうか。国連のミレニアム生態系評価によれば、現在の生物の絶滅速度は過去に比べて100〜1000倍の速度に達し、生物多様性の減退に伴う生態系サービスの劣化が懸念されているのです。
環境を『利用する』ことが『保全する』ことにつながるロジック
生物多様性の保全に関しては、自然保護区等の設置によって原生的な姿で維持されてきた自然を守る取り組みが目に留まります。自然を『利用しない』ことによって『保全する』ロジックです。しかし、自然を『利用する』ことが『保全する』ことにつながる場合もあります。『里地里山』のように、長い年月をかけて農業や林業、あるいは人間の営みそのものを通じて形成・維持されてきた自然生態系がそれにあたります。ここでは、人間の営みと自然生態系が一体となって、ひとつの『環境システム』を構築しているのです。そのため、農業や林業、生活の場として自然を持続可能な形で『利用する』ことにより、里地里山の生物多様性は『保全される』のです。
里地里山の今
ところが、農山村地域では少子高齢化や過疎化による労働力の低下に加えて、輸入資源との価格競争に苦しみ、農林業の衰退とともに里地里山の生態系は荒廃しつつあるのが現状といえます。この問題を解決するためには、人間が作り出した二次的な自然生態系の価値を認め、その保全を図ることの重要性を共有しつつ、地域の特性に即した対策を講じることが重要です。我が国は、これを『SATOYAMAイニシアティブ』として提唱し、持続可能な生物資源の利用・管理の方法、問題の克服手段などを世界的に共有しあうことを呼びかけています。
持続可能な利用
国内におけるSATOYAMAイニシアティブ推進事業では、里地里山の新たな利用方法として、体験型環境学習を目的とした旅行『エコツーリズム』の導入が注目されています。旅行客は農山村地域を訪れ、レクリエーションを通じて生態系保全に関する取り組みを体験します。これにより、旅行客は自然を『利用する』ことと『保全する』ことの有機的な関係を学ぶのです。ここで重要なのは、観光ビジネスのひとつの形態として催行することです。地域経済の活性化に結びつくことがインセンティブとなり、地域住民はより良好な学習機会を提供しようと里地里山の魅力回復に努めるようになります。これにより、地域コミュニティの再生・活性化につながることも期待できるのです。
本ゼミナールのSATOYAMA研究
里地里山といっても、様々な形態のものがあります。当研究室では、里地里山を流れる『地域河川』に注目しています。河川生態系は森と海をつなぐ生態系ネットワークの重要な要であり、人間活動の影響を受けやすい繊細な生態系でもあります。そのため、人間の営みと生態系の緊密な関係を学習するエコツーリズムの対象として特に適しているといえます。フィールドワークでは、『水環境健全性指標』という環境評価手法を用い、川原を散策しながら簡易な水質検査、生態系調査、河川構造物調査などを実践し、地域河川の魅力を発見するとともに、河川生態系が荒廃しつつある現実やその原因を『環境動態解析』により探求していきます。地域河川生態系と地域社会の間の『環境システム』を研究し、河川生態系を対象にした新しいエコツーリズムプログラムの開発を目指します。
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