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 水環境健全性指標

 健全な水環境とは

 水環境の健全性を表すバロメーターは?と聞かれれば、多くの人が『水質』と答えるでしょう。確かに、良好な水質を保つことは、私たちが清浄な生活用水、農業用水、工業用水等の水資源を得る、すなわち利水の観点から必要不可欠なことです。しかし、私たちが水環境に求めるニーズはこれだけでしょうか。
 例えば、都市を流れる河川に対しては、時として良好な水質よりも高い治水効果を期待したりします。一方、里地里山を流れる河川に対しては、良好な水質はあたりまえで、美しい景観やレジャー等への利用可能性を期待したりします。健全な水環境とは、それぞれの地域のニーズに合った水環境をいうのではないでしょうか。
 水環境がもたらす多様なサービスは、水質だけでは評価しきれません。健全な水環境を創造していくためには、より多角的に水環境の姿を描き出すための『新しいものさし』が必要です。


 新たな評価指標・・・『水環境健全性指標』

 水環境健全性指標は、このような背景に呼応して開発されました。水環境を水質だけでなく、幅広い視点から捉え、人々の満足感等も表現できることや、住民・NPO等の活動成果が映し出され、行政施策の立案に役立てることができることなどが重視されています。試行調査を経て、現在『水辺のすこやかさ指標(水しるべ)』として環境省のホームページで公開されています。本ゼミナールでは、群馬県衛生環境研究所で改良された『群馬県版水環境健全性指標』を活用しつつ、これをベースにさらにオリジナルの改良を加えていく予定です。


 群馬県版水環境健全性指標

 群馬県版水環境健全性指標では、水環境を「水のきれいさ」(水質)だけでなく、「自然なすがた」、「ゆたかな生物」、「水辺環境」、「地域とのつながり」等の多様な評価軸から評価(1〜5点でスコア化)します。「水のきれいさ」は、水の利用可能性を表します。「自然なすがた」と「ゆたかな生物」は、河川生態系の潜在的な魅力を表します。「水辺環境」と「地域とのつながり」は、水辺空間の利用可能性を表します。各評価軸のスコアで描かれる5角形の形状から、河川環境の姿を分析することが可能です(図1参照)。




図1. 群馬県版水環境健全性指標によるスコア化のイメージ


 各評価軸は、それぞれ4〜5項目の評価細目で構成されます(表1参照)。



表1 群馬県版水環境健全性指標の評価軸と評価細目
 水のきれいさ 自然なすがた ゆたかな生物  水辺環境  地域とのつながり 
 ・ COD
 ・ 溶存酸素
 ・ 透視度
 ・ 水のにおい
 ・ 水の見た目
 ・ 河川の水量
 ・ 排水の流入
 ・ 護岸の状況
 ・ 川の中の障害物
 ・ 川の流れ
 ・ 魚や水生生物
 ・ 鳥や昆虫
 ・ 水辺の植生
 ・ 川の周囲の環境
 ・ 水辺の見た目
 ・ 水辺の薫り
 ・ 水辺の音
 ・ 水辺の景色
 ・ 水辺の安全
 ・ 川の歴史、文化
 ・ 水辺へのアクセス
 ・ 人々の利用
 ・ 利水
 ・ 環境活動


 データの見方

 5角形の大きさは、一般に河川の源流域では大きく、下流域では小さくなる傾向があるようです。しかし、5角形が大きい方が良い、あるいはバランスが取れている方が良いということではなく、それぞれの地域に合った特性を有しているかどうかが重要です。


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