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ごみ処理有料化政策の効果と今後の課題

202-153 保坂 匡

環境省は2005年1月、廃棄物処理法の基本方針改正にあたり、国の政策として、一般廃棄物処理の有料化推進を新たに打ち出した。ごみの発生・排出抑制を誘導する仕組みづくりとしてごみ処理の有料化が注目され、近年、ごみ処理を有料で行う自治体が増えている。今回の基本方針改正は、今後の自治体におけるごみ処理の有料化導入に拍車をかけるものと考えられる。

ごみ処理有料化が注目される背景には、一般廃棄物最終処分場の残余年数の逼迫という問題がある。新たな処分場をつくるには、困難な土地の確保、自治体財政の圧迫、地域住民の反対など様々な問題の克服が必要となる。そこで、即効性があり減量効果も大きいとされる有料化が全国で採用されてきた。

本論では、有料化の実施例として、東京都日野市、千葉県野田市、兵庫県洲本市、香川県香川町の4市町をとりあげる。いずれもごみ処理有料化政策を導入している自治体である。日野市と野田市は有料化の成功事例として、洲本市と香川町は失敗事例として検証し、それぞれの施策を比較・検討する。

ごみ処理をめぐる背景や地域の特性は、自治体ごとに千差万別であり、正しい有料化の方式・料金設定といった、はっきりとした結論は得られなかった。しかしながら、成功事例には、失敗事例には見られない共通点を見出すことができた。有料化に成功し、現在に至るまで減量効果が持続している日野市と野田市では、いずれの場合においても、有料化に先がけて行政と地域住民との間で十分な合意形成が行われていたという点である。逆に、有料化に失敗した洲本市と香川町は、両市町ともに住民に対する説明・広報などの面で不十分であったといえる。

自治体は、地域住民に向けた情報提供の中で、ごみ処理のために要した経費を必ずしも正確に明示してこなかった。有料化の効果や問題を住民が理解できるように、成功事例・失敗事例の情報を公開することが重要である。国は積極的に有料化政策の事例や取り組み状況などの情報を広く全国から集め、情報公開していくべきである。



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