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カーシェアリングによる環境・交通問題への対応
―自動車の所有から利用への発想転換

202-134 仲嶋 晶子

モータリゼーションによって、私たちの生活はより快適なものになった。しかし、都市交通や地球環境など、私たちの生活に落とした負の面も大きい。それらの対処法の1つとして、自動車の共同利用である「カーシェアリング」が提案されている。

モータリゼーションが進展し、自動車が広く普及したことによって、都市部の拡大や交通渋滞、地球環境・有限である資源エネルギーへの負荷など、社会に多面的な影響を与えた。自動車を単に「所有」するのではなく、どのように「利用」するか、その発想の転換であるカーシェアリングは、交通需要マネジメントの施策として非常に有効な手段である。

カーシェアリングとは、1台の車を複数の人々が共同で利用する会員制のしくみである。1947年にスイスでその原型が誕生し、現在ヨーロッパを中心に世界中の約450以上の自治体で、17万人以上が会員となり利用している。自家用車を所有する場合と比べて、車体購入費や税金、保険といったコストを削減することができる。社会的にも自動車の台数が減少することで、交通渋滞の解消、公共交通機関の活性化、駐車場問題の改善、また電気自動車(EV)等を利用することにより、環境負荷の抑制にもつながる。

日本でも、企業やNPO、自治体等によるカーシェアリングの実験が全国で数多く行われている。EVの導入や管理システムの実験と同時に、マンションや団地に車両を提供することで在宅者のセカンドカーとしての利用状況や、企業や自治体での業務用車両としての利用状況がそれぞれ確認された。

これらの実験結果から、現段階ではそれほど広まっていないものの、カーシェアリングの需要は確実にあると判断される。しかし、収益事業としてみると今の日本では普及は困難である。自治体や企業は主力会員となる層を十分に考慮したうえで、カーシェアリング事業を展開する必要があるだろう。この層とは、まず始めに環境や社会に対する意識が比較的高い人々であり、次に公共交通機関はそれほど不便ではない地域に住む人々(セカンドカーとしての役割をカーシェアリングが補う)。最後に社用車や公用車の代わりにカーシェアリングを利用する企業や自治体の3つである。

カーシェアリングとは、一種の「文化革命」ではないだろうか。潜在的に人々の心の中にある、車は「所有」するものだという発想を「(性質の)利用」という発想に転換する。モノを所有する欲望を捨て、利用する合理性を理解し実行することは容易ではない。また規制緩和等の法的な整備も不十分であり、普及には時間がかかるだろう。しかし、企業や自治体は環境や社会に対するカーシェアリングの有益性を伝え、私たちがそれを理解することで、近い将来新しい交通サービスの一つとして定着するだろう。



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