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中国西安市における水環境の現状

201-188 張 睿欣

中国西安市は、近年経済発展とともに環境悪化も進んでいる。西安市は、5000年前の時代から自然環境の豊かな地域であり、南の秦嶺山脈から流れて来た渭河本流と渭河の支流合わせて8本の河川に囲まれている。水は人類の生存と発展に欠かせない環境要素である。黄河の最大の支流である渭河を中心とする西安市周辺河川は、西安地区における生命の源である。しかし、最近の都市下水や、工場排水などの未処理汚水の大量排出は、河川の自浄作用を超えてしまった。かつての澄んだ河の水は「しょうゆ色」に変わり、水面は絶えず泡立っている。

この25年間、西安市の工業・農業生産規模の拡大や、都市人口の増加と生活条件の改善にともない、水需要が急激に増えている。水不足の問題がますます深刻化している。1996年まで、都市用水は地下水を利用していた。しかし、人口の集中に伴う地下水位が持続的に下降している。これは、地盤沈下や亀裂の原因に繋がっている。

持続的発展を遂げるためには、水資源問題を解決することが課題になっている。今中国では、環境に比較的大きな影響を与える地域や流域の環境保全プロジェクトへの投資を増やしている。1998年~2002年の5年間、西部大開発の実施にともない、西安市は総投資額149億9000万円に上る都市環境総合整備プロジェクトの調印を行った。その中で、西安市の給水不足を解消するため、西安市の南水北調のプロジェクト(南部の豊かな水を水不足に悩む北部都市に供給する)が完成した。長い期間地下水に依存した状況は終わりつつある。

また、都市の下水道施設の整備を行うことにより、市内河川の水質改善を図り、西安市の下水処理率を、2005年までに50%以上とする事を目標としている。さらに、西安市の統轄8区、5県の地域において、排出汚染を行った企業や事業所に操業停止や移転などの強制対策を取ることなども行われ、西安市周辺の河川水質改善に取り組んでいる。

今後西安市の水環境改善の課題として,3つの問題点を提起したい。

(1)今まで完成した4箇所の汚水処理場の稼動率が低下している。その原因は下水管網の整備と運営資金が十分ではないためであり、また、水の再利用率を高めるため、さまざまな工夫も考えなければならない。(2)紙パルプ企業の排水が河水汚染の主要原因であるが、取締り策の実効性が懸念されている。住民の監視役としての参加が不可欠であろう。(3)市民の節水意識が喚起されなければ、水資源の有効利用に繋がらないため、環境教育が重要であり、また、農業の節水灌漑技術の開発・普及も必要とされる。



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