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ビオトープの視点に立った建築工法と今後の展望
-屋上ビオトープと屋上緑化-

200-147 花井 崇

近年、自然環境復元の有力な手段として、ビオトープ作りが始まったのは1990年代のことである。その後、1992年にブラジルのリオデジャネイロで開かれた地球サミットで、地球の持続的な発展のために、「生物多様性条約」が締結され、生物多様性の観点から行政が積極的に関与し始め、次第に規模を増し、数ヘクタールの規模のものも各地で見られるようになった。大きな概念で捉えると最近の河川・湖沼工事における「近自然工法」、荒廃した里山を市民ボランティアによって復元しようとする「里山管理」運動などもビオトープ作りに含まれるであろう。そう考えるとわが国においてビオトープ的な運動は広く普及していると見る事も可能である。

現代の日本人は、人間生活にとって本来あるべき自然環境や体験の機会が奪われており、それに代わって人工的な環境や装置、商業的な娯楽に取り囲まれて生活していると言ってよい。しかし、多くの日本人が都市から農山村に移動し、かつてのような生活を送る事は不可能である。したがって、まず都市地域においても、幼児でもアクセスしやすい日常の身近な場所に、たとえ小規模でも生き物が生息する空間、すなわち、ビオトープを造成することが必要なのではないだろうか。

そうした観点・視点に立ち、本論では主に、屋上ビオトープ・屋上緑化における先進的・その後の指標となる具体例を取り上げた。福岡県にあるアクロス福岡では、四季の山ものがたりをテーマとした「ステップガーデン」を建設し、竣工以来、大学研究室と技術研究所でステップガーデンの熱環境調査を実施している。その結果、屋上ビオトープ・屋上緑化がもたらす地球温暖化・ヒートアイランド現象の抑制効果が顕著に現れ、その他にも断熱効果・雨水貯留効果や絶滅危惧種の保存など様々な有益的な効果を検証することができた。



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