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生活排水による湖沼汚染とその対策
―霞ヶ浦を例に―

200-076 小松崎 貴

霞ヶ浦は水資源確保のための開発事業が完成したことにより治水の安全性は著しく向上し、安定した利水が可能となった。しかし、流域の都市化、産業活動の進展、生活様式の変化などが、変化水質の悪化をもたらし、かつて周辺に広がっていたヨシやアザサなどの水生植物を始めとする豊かな自然が減少した。

COD(化学的酸素要求量)を指標に汚染程度を判断する。CODとは、水中の有機物を酸化剤で化学的に分解した時に消費される酸素の量をいい、数値が高いほど汚染がすすんでいる。平成13年度の霞ヶ浦のCODは8mg/lであり、利水状況に応じた環境基準値は3mg/lだから、大変汚れていることになる。霞ヶ浦が汚染した要因は、台所で使用する燃料が、昭和30年代から大きく変化し、まきから石油、石油からガスへ移ったことである。料理する方法も変化し、油を使った炒め物、天ぷらやフライものなどの揚げ物料理が多くなった。家庭から出される廃食用油や揚げ物の器の洗浄水などが多くなったことが汚染の要因である。

生活排水のCOD負荷割合は、3割と高い数値である。しかし、農業・畜産業の対策と違って、市民が生活排水を意識して流さないようにすれば、確実に水質はよくなる。そこで、霞ヶ浦のような湖沼での水質汚染に対し、流域市民や行政がどのように取り組むべきか導きだし、文献やパンフレットによって検討した。石岡市民の主婦100人に行ったアンケートでは、霞ヶ浦に対する意識や家庭内対策の実施状況を質問しており、その結果、多くの市民から、霞ヶ浦への愛着や関心の低さ、市民の多くが霞ヶ浦汚染の主な要因として「生活排水」と理解していても、あまり多くの家庭内対策を行っていないことが分かった。一方、市民に対して行われている講演会や、セミナーなどに積極的に参加したことがある市民は、霞ヶ浦の現状をよく理解しており、家庭内対策にも積極的に取り組んでいた。この市民の差は、霞ヶ浦への愛着、自然の大切さの感じ取り方による差と考えられる。

最近の水質調査から、水質の季節変動がなくなり、年平均水質を悪くしていることが分かる。夏季に発生し、冬季に死んでいた植物プランクトンが、通年生きられるプランクトンに変化したためである。汚染の進行をとめるために、市民は、行政や市民団体による水質浄化運動に積極的に参加することが重要である。霞ヶ浦から恩恵を受けて生活する動物や植物のことも考え、水環境にやさしいライフスタイルを送らなければならない。



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