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企業におけるISO14001の認証取得の是非

299-072 桜井 一郎

現在日本のISO14001認証取得数は世界最多である。高度経済成長期において多くの企業は利益優先の企業活動を行い、環境問題を考慮しなかった。企業活動の優先が地球の環境の悪化を招いた一つの要因である。そこで企業などが環境問題を継続的に改善する為にISO14001が国際標準化機構によって制定された。しかしISO14001は企業経営において有効な手段になるのかという事は疑問であり、本当に必要なものであるかを検証する必要がある。

金沢市の企業に対してアンケート調査を実施し(郵送法で回収率75%)、企業の環境意識を調査したところ、多くの企業は環境問題に関心を持っていた。しかしISO14001の認証取得理由に関する質問では、環境問題に対する対策というよりも企業のイメージアップを図り、業績を良くしようとする考え方が強かった。しかし動機を問わず認証取得後には企業としてもまた社員の中にも環境問題というものを真剣に考えるようになったという効果もあり、環境負荷軽減の意識は広まっている。次にISO14001を認証取得している企業の環境報告書を検討してみると企業として環境問題に積極的に取り組もうとする姿勢が認められた。またISO14001を認証取得する事によって継続的改善が要求されるため、環境負荷においてはリサイクルを積極的に推進し、産業廃棄物の排出量を年々減少させていた。従ってISO14001の本来の目的である環境負荷の継続的改善は果されている。

企業にとってのISO14001に対する考え方、つまり企業のイメージアップや新規事業の開拓の手段とISO14001の本来の目的は一致していない。しかし最終的に認証取得をした際に行き着く結果は環境負荷を継続的に改善していくという点では一致している。ここで危惧されるのは認証取得した企業の環境対策の内容の形骸化である。作成した文書と実際の行動の一致していない企業が出てくると重大な問題となる。しかしこの問題さえ未然に防止すればISO14001は環境問題に対して有効な手段となり得る。そして企業にとっても認証未取得の企業との差別化を図ることは、今後企業として市場の中で生き抜いていくための有効な手段である。従ってISO14001は企業にとって重要なものとなる。



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