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環境ホルモンによる環境汚染とリスク評価

298-144 森澤 芳之

レイチェル・カーソンの「沈黙の春」やシーア・コルボーンらの「奪われし未来」が発刊されて以来、従来の化学物質毒性の意味が大きく変わった。それまでは、有害化学物質の「有害性」とは、「死」にいたるものと考えられていた。しかし、この二つの著書の警告は、「生殖毒性」に焦点があてられている。すなわち生命そのものが生まれないか、生まれても健全な身体をもって生まれない危険性を告発している。

こうして、「環境ホルモン」という言葉が定着するようになったが、ただ、この「環境ホルモン」に関する定義は、米国をはじめ、各省庁でも明確な定義は示されていない。一般には、「内分泌かく乱物質」と呼ばれ、ホルモンに似た働きをし、ホルモンの働きや量などに影響を及ぼす低濃度の化学物質を指す場合が多い。この代表的なものとして、ダイオキシンという物質がある。この物質はべトナム戦争時にアメリカ軍が使用した枯葉剤の中に含まれ、胎児の奇形を引き起こし、また発がん性を有していることで知られてきた。しかし、現在では微量、というより超微量が体内に入っただけでも長期にわたって体内に残留し、人間の生殖器に異常をきたす大変危険な物質であることがわかってきた。

こういった身近な物質はどのように人体に作用し、我々の生活環境を汚染しているのか。それはどの程度の大きさなのか。現時点では、この疑問に整った答えを出しうる状況にはない。しかし、この悪影響を未然に防ぐための研究は様々な分野で精力的に進められ多くの成果が蓄積されつつある。そのひとつとして、最近進歩の著しい分子・細胞生物学的な実験技術を作り上げつつあるリスク評価を取り上げ、DDTについてリスク評価をし、検討した。



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