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日本の世界遺産における原生物自然の保護

297-183 ティアン コンキャ

世界遺産とは、1972年のユネスコ総会で採択された世界遺産条約に基づく世界遺産リストに登録されている物件のことである。

日本がこの世界遺産条約の締約国となったのは、第17回ユネスコ総会での採択から20年も遅れた1992年のことであった。

日本における世界自然遺産の登録は、屋久島と白神山地の2つだけであり、これに対しての世界文化遺産は9つと多い。ただし、世界遺産は締約固から推薦されるものであり、文化遺産と自然遺産の割合は、世界全体でも日本と同様に、自然遺産と文化遺産はほぼ1対4の割合となっている。自然遺産が少ないことは、自然遺産のとらえ方に問題があると考えられ、21世紀の地球を考える大さな視点から、さらに検討を要することである。

白神山地は、青森・秋田県境の西部に広がる山地で、古来の日本の山地の特徴をよく保全している。これはブナの木だけが重い雪圧に耐え、生き残ってきた生命力の強さをも伝えている。登録以前には、「マタギ」と呼ばれる狩猟を生業とする人々の伝統も残された場所であった。しかし、登録後には、立ち入りの申請書を事前に青森県に提出し、許可されなければ入山することができなくなった。

屋久島は1921年より保護されてきた区域は特別保護区として再指定されたが、特別保護区の外にある樹木は全く保護されず、明治から昭和にかけての約100年にわたって次々と伐採されていく。地元の人々の中から保護の必要性が叫ばれ、無軌道な伐採の中止を求める運動が展開されていった。そして1993年に世界自然遺産として登録されるに至ったのは、こういった、地元の人々の保護意識の高まりと現実の運動、そしてそれに連動した地方自治体や国の保護への取り組みが評価されてこそのことである。

文化遺産はつくられた「もの」であるのに対して自然遺産はつくられる「もの」ではない。ここに比較の難しさがあると思う。文化は個々の文化・文明を見比べて行けばよいが、自然はそうはいかない。範囲も広く数々の生物、景観、地質などを含み、自然は地球全体で一つながりである。自然は人類と共に生き続けるべきであり、世界自然遺産は守らなければならない。



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