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倉渕村クラインガルテンからみる
農村地域型市民農園の現状と課題

297-132 原田 慎太郎

近年の市民農園に対する関心の高まりは、都市化の進展に伴って自然・緑地環境が急速に減少し、都市住民が都市的快適空間だけでなく、自然・緑地空間に対する欲求を高めてきたためであり、市民農園は都市における自然・緑地空間機能の一つとして要請されてきた。また、都市との関連において農村を活性化させようという農村側からの要求とも合致した、新しい動きと評価される。

農村地域における市民農園はまだ事例が少なく、その必要性から今後の発展が期待されている。本稿は、農村地域型市民農園の先駆的事例である倉渕村クラインガルテンについて取り上げ、現状と今後の課題を考察した。

倉渕村クラインガルテンは、市民農園を核として、恒常的な都市農村交流による村の活性化を目指し昭和63年に構想が始まった。倉渕村クラインガルテンの大きな特徴は、多様な種類の宿泊施設を園内に設置していることと、その利用は農園利用者を優先的にし、その他行楽客にも開放することで農園の年間をとおしての有効利用を図っている点にある。平成8年に、体験実習館に温泉が引湯され利用者の保養施設となっている。しかし、平成9年、第3セクター「相間川温泉株式会社」に運営を委任してから、温泉業務が中心となっていて、都市農村交流事業等の実施が難しい状況となっている。農村地域型市民農園は都市農村交流によってその目的を果たすのであり、そのためには利用者のニーズに対して質の高い環境とサービスを用意する必要がある。また、利用者と農園との開に信頼関係が築かれなければ、理想的な交流を継続的に発展させることはできない。それには長期計画的な方策が必要である。

必然的に遠隔地の利用者を対象とする農村地域型市民農園は、農園以外の地域資源を呼び物にし、都市型市民農園では不可能な点で個性化を図ることが多いが、その中で農園の存在意識が乏しいものにならないよう、実質的な目的の相違を明確にし、そのための空間の分節化と施設の運営の分離を図っていくことが今後必要となる。都市から遠距離にある位置的課題において、豊かな自然環境と調和を図り、都市農村交流の拠点としての施設整備がこれからの農村地域型市民農園に求められることであると私は考える。



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