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汚染住宅がまねいた現代病
~シックハウス症候群と化学物質過敏症~

296-139 藤崎 貴子

現代のようなストレス社会を生きる私たちにとって1日の大半を過ごすもっとも身近な環境である「住まい」に対して求めるニーズとは「快適さ」である。

しかしながら、現実には私たちが住まいに対し求める「快適さ」というニーズを裏切られる現象が全国各地で起こり出した。その現象とは、新築の家や室内のリフォームをした家やマンションに住み始めた途端、なぜかのどや鼻の奥が痛かったり、頭痛や目のチカチカ、自律神経の変調や慢性疲労など身体の不調を訴える「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」患者が急増しているというものである。

厚生省が97~98年度に実施した初の全国調査では、「シックハウス症候群」との関連が指摘されている揮発性有機化合物44種類について、室外と室内の空気中濃度を調べた結果、室内の方が室外より3倍以上高い値を示していることから、発生源が室内にあることが確認された。(調査は全国の一般住宅385戸を対象に実施し、揮発性化学物質の濃度を24時間続けて測定したものである。)

また、ユーサイキア研究所の「住まいと健康意識調査報告書」(1998年)によると、室内空気は新築やリフォーム直後がもっとも汚染がひどく、その後、時間の経過に伴って低減していくことから、居住者の健康状態は築年数が短期間であるほど、化学物質の健康影響の代表格である「疲れやすい」、「頭痛」、「身体がだるい」などの症状を訴える人が多いことが明らかである。

これらの調査結果から壁紙の接着剤やフローリング床のワックスなどに含まれる揮発性有機化合物(ホルムアルデヒド、トルエンおよびキシレンなど)による室内の空気汚染は私たちの身体に悪影響を及ぼしており、私たちが住まいに求める快適さが奪われていることがわかる。

このような現象の背景には、住まいの本来の快適さよりもコストダウンや合理化の名のもとに、設計・施工の手間を省き、その欠陥を化学物質で穴埋めしたところにある。

汚染住宅がまねいた「シックハウス症候群」や「化学物質過敏症」という現代病を解決するためには、本来あるべき住まいの姿である「人が住む」という原点に戻らなければならない。



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