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藤前干潟の埋め立て計画に見られる
環境影響評価の現状と課題

296-071 坂口 修一

日本では、戦後から続いてきた環境破壊を伴った開発のあり方を反省すべく、平成11年6月、環境影響評価法が施行された。ほぼ同時期に、愛知県名古屋市では、藤前干潟の埋め立ての事業計画を断念した。

藤前干潟は、愛知県名古屋港の内部、およそ90へクタールの干潟で、現在では日本で最大の渡り鳥の飛来地である。名古屋市は、ここに廃棄物処分場を造成しようと計画したが、結局、環境影響評価書の欠陥や環境庁など中央官庁、世論の不支持によって断念せざるを得なくなった。藤前干潟の環境影響評価を具体的に詳細に分析するために『名古屋市港区藤前地先における公有水面埋立及び廃棄物最終処分場設置事業に係る環境影響評価書』を入手し、環境影響評価が適切であるかどうかを検討した。尚、この評価書は環境影響評価を行う上での基礎的データが提示されており、1000ぺージを超える内容である。

その結果、以下の4点を明らかにした。(1) 環境影響評価書の前段階である準備書において、干潟における、主に鳥類への影響についてのデータの信頼性が低い。(2) 事業完了後の影響評価における水質基準等において、事業に関係の無い要素を取り込み、影響は無いという結果をやや強引に導き出した。(3) 代替措置を検討する際、現在では技術的に未成熟な人工干潟などをあげ、ほかの代替措置の検討を行わなかった。(4) 住民との接点である公聴会において、住民への積極的な情報公開がなされていなかった。そして、この環境影響評価が全体として、地域住民や環境保護団体をはじめとする世論の理解を得ることができなかった理由について検討し、事業者主導でおこなわれている現在の環境影響評価がやや強引な事業の進め方を促している要因の一つであることを明らかにした。これらのことから、今後の環境影響評価のあり方を考える上で重要な事として、住民参加の機会増大、審査の公平性・中立性の強化などを提起した。



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