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転換期にたつアメリカの原子力政策の現状と将来

298-170 タン フー チョイ

気侯変動問題への世論の関心の高まりを背景に、原子力発電が二酸化炭素を排出しないクリーンなエネルギーと位置づけ、温暖化防止対策の柱として推進しようとする動きが目立つ。地球環境の保護という本来の目的からすれば、二酸化炭素の排出という観点のみからの判断ではなく、生命や環境に影響を与えるその他の要因も考慮しなくてはならない。温室効果ガスの抑制策を導入する場合、その抑制策によって別の種類の顕著な危険性を新たに導入しないことが必要になる。

しかし、原子力発電は非常に危険なシステムと、何万年もの間監視を必要とする放射性廃棄物という負の遺産を、次世代に残すことになる。さらに、原子力の事故が起きた場合は、放射線の汚染によって地球上の生物すへてが危機的状況におかれるのが現状である。

今回は、2001年5月に公表されたブッシュ政権の「国家エネルギー政策」を翻訳したものがなかったため、この報告書を翻訳してみた。クリントン政権と比べてみた結果、クリントン政権のエネルギー政策では、原子力発電所の新規建設を視野に入れておらず、既存施設をていねいに有効に利用するが、それ以上に拡大せず、むしろ新技術や代替エネルギー技術の開発、エネルギー効率の高い技術の開発、そしてより長期的にはソフトエネルギーの商業利用に努めるとしていた。しかしながら、ブッシュ政権では、電力需要に対する現実的な方法として原子力発電所の建設も選択肢に入れ、原子力の拡大を勧告していることが大きな違いである。

報告書では原子力の拡大について、次のような表現を用いて勧告している。(1)米原子力規制委員会(NRC)は安全と環境の面からして新型原子炉の認可に積極的な姿勢を示す必要がある。(2)NRCは原子力発電所の寿命延長を積極的に推し進める必要がある。(3)使用済燃料の地下貯蔵所の建設を促進できるベストな安全評価法の取入れを図る必要がある。(4)核不拡散を視野に入れた新型核燃料サイクルの推進を図る必要がある等。

ブッシュ政権によって、アメリカの原子力政策は、大きな転換を迎えるだろう。しかしながら、この転換は良いこととは思われない。



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