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所沢におけるダイオキシン問題
-報道が与えた影響と今後の展望-

296-018 市川 祐喜

平成11年2月1日テレビ朝日系の番組「ニュースステーション」で、番組独自の調査結果をもとに埼玉県所沢産のほうれんそうは高濃度にダイオキシンで汚染されていると報じた。そのため、10日までの損害は県の試算で約3億円に上り、11日にはテレビ朝日の伊藤邦男社長らが参考人招致される事態にまで影響は及んだ。行政は安全宣言、産廃処理施設の規制等を行ったが、配慮に欠ける部分はなかったのであろうか。

本稿では、まず1日耐取量(TDI)の数値を他国と比較した。平成11年まで日本の厚生省のTDIは10p(ピコは1兆分の1)g、環境庁は5pgであった。これに対しWHO(世界保健機構)のTDIは1から4pg、米国の環境保護庁は0.01pgである。他国に比べ規制が甘いこと、また同じ日本国内において数値が違うこと等から、ダイオキシン対策法により我が国のTDIは4pgに統合された。

次に農林水産省、厚生省、環境庁相互の連携のもと報告された結果から見た所沢市の汚染状況を野菜関係、茶関係別にまとめた。その結果から見ると、所沢市産の野菜及び茶は平成9年度の厚生省による全国の調査結果の範囲内かそれ以下で、健康に影響を生じることは考えられないと結論づけられている。しかし、民間研究所である環境総合研究所の数値と比較すると、行政側の数値が低いことが分かる。ほうれんそうに関して見ると、環境総合研究所による汚染度は0.64~0.75pg。農林水産省、厚生省、環境庁による汚染度は、ほうれんそうの出荷状態の汚染度は0.0085~0.15pgと、行政側の数値が民間研究所に比べ低いことが明らかになった。分析方法が確立していないことが、数値の差を生む背景となっている。

環境先進国においてはダイオキシン問題の対策は十分になされている.しかし日本においては今まさにスタートラインに立ったところであり、環境先進国に比べおよそ10年遅れているといわれる。本稿では我が国のダイオキシン対策の遅れを指摘するとともに、今後の速やかな対応、資源循環型社会への必要性を明らかにした。



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