卒業生への御言葉巡検・イベント好きなゼミ生達(卒業論文集 第9号より) 2008年3月

巡検(エクスカーション)は我がゼミの恒例行事の一つとなっている。地域・都市を深く理解するのに“百聞は一見に如かず”となる巡検は欠かせない。ゼミのキャッチ・コピーに、“るるぶる”を挙げていることもその意図がある。これは、某旅行会社の“見る・食べる・あそぶ”に“調べる”を加えたものである。最初は高崎市街地を巡るものであった。この巡検は、多様な地域から集まるゼミ生達が高崎市街地について共通の認識・基盤をつくるのに欠かせないものであり、終了後の懇親会も楽しみの一つとなっている。

その後、N君の出身地である新潟県・上越市に出かけ、日本にスキーを紹介したことで知られるレルヒ少佐の記念館、高田城、雁木の景観、直江津港と日帰りにもかかわらず密度の濃い巡検となった。昼食は思いもかけずN君の親御さんの計らいで、海の幸が目の前に並べられ、有り難さで空腹も満たされた。

このように経験を積んだ9期生が次に企画してくれたのが、金沢巡検であった。我がゼミ始まって以来の新企画として10期生(3年生)との合同巡検となり、すべてのプログラムを作ってくれた。私にとって金沢は亡き父の生まれ故郷であり、高校2年の時に東京から転校した地であった。そのため、何度か口をはさみたくなったが、じっと我慢して皆の手腕に任せた。その結果は、コース設定から宿泊場所・飲み会の場所、近江町市場での海鮮を中心とした昼食まで見事なセッティングだった。とくに、夜の飲み会では、誕生祝いのケーキ(?)とメタボリック対策のバランスボールが用意されていた。私ぐらいの年齢になると感動が薄れることが多いが、サプライズであった。

驚きの続きは、翌日、金沢城の菱櫓・五十間長屋で起こった。見事な建物の内部を見学中、「復元に当たって耐震構造に配慮した」といった説明CGを見ている最中に、明らかに揺れを感じたのである。最初はどこかの子供達が走り回っているのだろうと思ったが、外に出ると次々に情報が入ってきた。ゼミ生の親御さんからも「今、新潟で大きな地震があったが、金沢は大丈夫か」といったメールが多く届いた。体感した揺れから、大した感じはしなかった。ところが、帰路につくため北陸自動車道に乗ると、高速道の不通区間が拡大しており、関越自動車道に入れないことがわかった。やむを得ず、糸魚川ICで高速を降り、白馬、長野を抜けるルートを選び、ようやく高崎にたどり着くことができた。帰宅してニュースを見ると、東京電力の柏崎発電所や街の様子が繰り返し報道されており、冷や汗が出た。新潟中越沖地震が深く記憶に刻まれる瞬間となった。

このように、9期生との思い出はつきないが、私を誘ってくれなかった巡検やイベントが多々あった。その理由は定かではないが、知らないほうが幸せなのかもしれない。しかし、若干、拗ねた振りをしたが、内心は積極的に活動し、思い出づくりに励む9期生を誇りに思っていた。これこそ、ゼミの本質だと思っている。9期生達はゼミ活動から大げさに言えば、今後の人生の歩み方の一端を学んでくれたのだと思う。それぞれの個性を生かしながら、つきあい方も考えてくれたのだと思う。その気持ちをもって今後の人生を乗り切っていって欲しい。

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