卒業生への御言葉“ぐるりん”の夏(卒業論文集 第4号より) 2003年3月

4期生を送り出すことになった。例年のように高崎市の市内巡検から始まり、エクスカーションは栃木県の佐野市に出かけた。佐野市はゼミ生のY君の出身地であり、手際良く市内を回り、佐野厄除大師のお詣りまで済ますことができた。最後は佐野ラーメンで締めくくることができ、ひと味違った思い出ができた。ここまでは、ゼミ恒例の行事であったが、4期生にはこれまでとは異なる調査が待っていた。

我がゼミは可能な限り、地域調査を行うことを目標としており、これまでにも、「高崎市中心市街地の活性化」「地域連携と吉岡町」と続けてきた。4期生にも何か調査をと考えていたときに、高崎市役所に勤める1期生のSさんから連絡が入り、市内循環バス“ぐるりん”の乗降客調査と報告書の取りまとめの依頼を受けた。地元の調査でもあり、交通問題を考える上でも意味があると考え、二つ返事で 承諾した。調査項目の設定から、“ぐるりん”の運行状況の確認、調査マニュアルの作成と順調に進んでいったが、次第に調査の大変さが明らかとなってきた。まず、調査時の“ぐるりん”は4路線であったが、右回り、左回りと計8路線、始発の午前6時台から最終の午後9時台までの全62便であった。また、可能な限り詳細な調査をとの前提があり、1週間を通じた全数調査が求められたため、人員配置の関係で、4年生(3期生)にも応援してもらうことになった。

調査はゼミ生の都合もあり、7月の終わりと9月の始めに設定された。予備調査を行っていればと思ったのは後の祭りだった。朝から晩までバスに乗り、ストレスのたまる乗客へのアンケート・ヒアリング調査、そしてバスから降りれば夏の暑さと、予想はしていたものの、想像を超えた調査となった。市役所で待機し、緊急時に備えていた私にとっても、拘束時間の長さに閉口した。調査初日が終了し、ゼミ長からこの調査を継続するのは無理とのメールを受けた時には、あと6日も残っており、困り果てて善後策を考えた。取りあえず、体力勝負と認識してからは、各種栄養剤とスポーツドリンク等を大量に買い込み、長丁場を乗り切ることにした。とは言え、最終バスを降りてくるIさんやOさんの目がうつろで、真っ直ぐに歩けない姿を見た時には、申し訳ない気がした。

しかし、この調査からは、色々な事を教えてもらえたような気がする。すなわち、いったん引き受けた仕事を、最後までやり抜く責任の重要性を感じ取ってもらえたと思うし、調査を終えた時の達成感は特に大きかった気がする。それが、皆の就職活動・卒論作成へと結びついたように思う。いずれにしても、“ぐるりん”の夏を経験した皆は、自信を持って社会に出てほしい。そして、最後まであきらめることなく人生を全うしてほしい。これは私自身にも言い聞かせたい。

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