地域政策学部発足後、今年で10期目のゼミ生を送り出すことになった。10期生は、出身地が北海道から沖縄県に至る11名であった。本学は群馬県外出身者の割合が約7割ということを考えれば当然なのかもしれないが、文字どおり全国からの出身者が集ったことになる。そのため、各自が行う夏の地域調査の報告(プレゼンテーション)はとても楽しいものになった。
ゼミのスタートは基礎的な文献研究から始め、例年どおり高崎市内巡検で地域を見る目を養い、筑波、焼津巡検を行った。その後、本格的巡検の場を長野市(善光寺の門前町調査)に選定した。最近は下調べとなる地域情報の収集にインターネットを活用することが多く、Yahoo!、Google等をフル活用してプランを練っていった。もちろん、「日本図誌体系」は我々のバイブルとして欠かすことができない。そして、ゼミの合い言葉となった“るるぶる”を実践することになったが、私からの提案で“小布施”を加えてもらうことにした。いうまでもなく、小布施町は地域づくりのモデルとなった場所で、江戸時代初期から「六斎市」という市が立ち、北信濃の物資の集散地として栄え、葛飾北斎ゆかりの地をアピールし、特産の栗を用いた各種のお菓子や造り酒屋といった地域資源を巧みに取り込んでいる。景観をメインテーマに設定した10期生達にとって、実際に町を歩くことで雰囲気をつかむことができ、かつ良い思い出ができたものと考えている。そして目指す善光寺に向かったが、7月の後半でもあり、次第に暑さが増してきた。今回の目的は門前町の景観調査であり、数グループに分かれ、善光寺からJR長野駅間を徒歩で巡検する予定だった。冷たい信州そばを食べ、歩き出すころには猛烈な暑さとなった。そして、ペットボトルを抱え、日陰を探して歩くものの吹き出す汗に負け、日射病を恐れてコースの大半をバスに乗ってしまった。往復徒歩を貫いたグループも多く、恐れ入った次第である。善光寺に戻って「お戒壇巡り」を待つ間も汗を拭き続けた。
このように、10期生は積極的にゼミ活動を行ってくれたが、ゼミ長の個性なのか皆の気持ちなのか定かではないが、これまでとは異なる雰囲気があった。一言で言うと、イベントが連続したのである。事ある度にコンパ、バーベキュー、食事会、誕生会...が催された。私を参加させたくない催しも多かったと薄々感じている。まさに“るるぶる”を実践・実行してくれた。このエネルギーはゼミ始まって以来の海外巡検(韓国・ソウル)に結びついた。目的の一つは現大統領がソウル市長時代に取り組んだ清渓川(チョンゲチョン)の再開発を現地調査することであった。もちろん本場の韓国料理に挑戦し、各自のオプションはしっかりと楽しんだ。私はランドスケープ論で使用するためにソウルタワーや南大門(修復中)の写真を撮る目的を果たすことができた。 いずれにしても、10期生との思い出はつきないが、“るるぶる”精神を育んだ10期生達は何かと厳しさが増してきた昨今の経済状況を乗り越え、それぞれの個性を生かしながら人生を歩んで行ってくれるものと期待している。
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