軽自動車のスゴさ

2012.7.13 110-319 田中 和輝

 

 自動車メーカー大手のホンダは、軽自動車で最大級の広さを実現した「N BOX」の派生車として「N BOX+」を201276日より発売を開始した。N BOX+の特徴としては、斜めの床やアルミスロープによって大きな荷物や自転車などを簡単に積み下ろしできるようにした「ユニバーサルブリッジ」や、身長190cmの人も足を延ばして寝ることのできるようなフルフラットモードを実現した「マルチスペースシステム」を採用し、今までの軽自動車では不可能だったあらゆることができるようになった点である。また、大型荷物だけでなく、車いすを載せることもできるため、比較的安価で小型の福祉車両としての利用も期待されている。日本自動車販売協会連合会と全国軽自動車協会連合会による20126月の車名別新車販売台数によれば、「N BOX+」のベースとなった「N BOX」はトヨタのハイブリッドカー「プリウス」「アクア」に続き3位(23090台)となっており、派生車の「N BOX+」も同じように人気が出ると思われる。

 このような「軽自動車」と呼ばれる車は、基本的に日本にしか存在しない。もちろん、偶然日本の軽規格に合うようなサイズの自動車はあるかもしれないが、作りがチープであったり、車内がやたらと狭かったりして日本の軽自動車のレベルには遠く及ばないものがほとんどである。この日本特有の規格は、アメリカの大手自動車メーカーも脅威に感じているようであり、実際過去にはビッグスリーと呼ばれる米国の自動車会社らから、米国車販売の障壁となりうる軽規格の廃止を求められるといったことがあった。660ccの小さなエンジンや、縦横高さなどの制限が多い中で、普通車に引けを取らないような品質の車を作り出す。いわば軽自動車は日本の技術の結晶といっても過言ではないだろう。

 また、軽自動車の種類も豊富になってきている。「ダイハツ・ミライース」「スズキ・アルトエコ」などガソリン1リットルあたり30km程度走行することができる(カタログ上)ような超低燃費を誇るハッチバック型や、「スズキ・ワゴンR」「ダイハツ・ムーヴ」といった発売当時から今現在まで長い人気を持ち続けている軽トールワゴン型、近年新たに市場に登場した「ダイハツ・タント」「スズキ・パレット」「ホンダ・N BOX」など、軽というよりはまるでミニバンに近いような広さを誇るスーパートールワゴン型(トールワゴン型より派生)などがある。価格も80万円台の低価格のものから、コンパクトカーの価格以上(200万程度)のものまであり、自分の目的や予算にあった軽自動車を選ぶことができる。少し昔までは、軽自動車といえば主婦や若い女性が主に乗る車であり、男性が乗ると少しカッコ悪いというイメージがあったものの、エアロパーツをつけたカスタムグレードの充実や、車自体を「移動手段」として考えている男性の増加により、若い男性を中心に軽自動車に乗る男性も増えつつあるようである。

 軽自動車に乗るメリットとしては、維持費の安さがある。普通車よりも、車にかかる様々な税金、高速料金、任意保険、車検などといった費用を安く済ませることができるのは大きな利点である。反面、長距離を乗った場合の快適性や、高速走行での安定性は普通車に軍配が上がるため、車の使用頻度や用途によって、どちらがよいかという考え方は変わってくるだろう。また、セダンやミニバンなどより全長全幅の小さい軽自動車は、その取りまわしの良さもメリットとなっている。広大な土地に道幅の広い道路が敷かれているアメリカのような国であれば、どんな大きな車であろうと、ハイパワー車であろうとその力を持て余すことなく発揮できるはずだろう。しかし、国土の狭い日本では事情が全く違う。道幅の狭い道路は当たり前であり、道と道の間の交差点には短い間隔で信号機や一時停止が多く設置されている。日本では、赤信号や渋滞など、街中では停車と発進を繰り返すような状況が多くあり、そのぶん燃費の良さも重視されているのである。燃費が悪く、サイズの大きな車よりも、比較的燃費がよく小回りが利くような軽自動車が選ばれる理由として、こうした日本独特の道路事情も関係していると思われる。

 また、日本の軽規格ほどではないものの、小型の自動車を開発したり、2人乗り専用の超小型車を発売しているメーカーは存在する。ドイツの自動車メーカーのフォルクスワーゲンが発売を予定している「up!」や同じくドイツ自動車メーカーのスマートが発売している「スマート フォーツー」などがこれに該当する自動車である。どちらも1000cc程度の排気量であり、軽自動車よりは大きいものの、外国車の中では比較的小さい部類に入っている。世界的にも、小さなサイズの車市場に目をつけているのは確実なようである。

 日本の軽規格は、体の大きな外国人が乗るためには小さすぎるため逆に不便であり、これからも海外市場が伸びていくことはないだろう。しかし、反面国内ではまだまだ需要があり、普段の足としても、小型のファミリーカーとしても軽自動車は求められている。これからも、この小さな車にさまざまな技術が詰め込まれていくことだろう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

【参考】

Yahoo!ニュース(レスポンス) 「【ホンダ N BOX+ 発表】価格135万円から」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120705-00000030-rps-ind

Yahoo!ニュース(レスポンス) 「6月の車名別新車販売ランキング、HVと軽が上位独占」

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120706-00000004-rps-bus_all

carviewニュース 「VW、新世代小型車up!をワールドプレミア」

http://www.carview.co.jp/news/5/151884/