進む軽自動車戦争

2013.4.19 110-319 田中 和輝

 

 日産自動車と三菱自動車の軽自動車部門を担当する合弁会社「NMKV」によって開発が進められてきた軽自動車「DAYZシリーズ」「ekシリーズ」が、いよいよ今年6月にデビューをする。第一弾はトールワゴン型車種であるが、その後は現在の軽自動車のトレンドであるハイトールワゴン型車種も発売が予定されている。「ホンダ」「ダイハツ」「スズキ」の三社が持つ軽自動車の牙城を崩すことができるのか、発売前でありながらもカーユーザーからはさまざまな声が上がっている。

 日本自動車販売協会連合会、全国軽自動車協会連合会が発表した2012年度の新車販売台数は、1位と2位がトヨタの「アクア」「プリウス」、それに続いて3位を獲得したのはホンダの「N BOX」であった。エンジンの小型化などによる車内スペースの拡大化、一昔前の高級車並の装備や安全性の向上などが評価され、他社が販売する同系車種の追随をさせないほどの独走状態でのゴールとなった。もちろん、ライバル車である「スズキ・パレット」「ダイハツ・タント」も黙ってみているわけではない。20132月よりスズキはパレットの実質後継車の車名を「スペーシア」と改めて販売し、さらなる低燃費や車内スペースの広さをアピールしている。また、「タント」も現行車の販売開始から6年経過していることから、近々モデルチェンジがあるのではないかという予想がされている。ランキングの4位以下にも「ワゴンR」や「ムーヴ」といった定番車や、低燃費低価格で話題となった「ミラ(イース)」などの軽自動車がランクインしており、トップテンの中の6台が軽自動車という結果になっている。ところが、このランキングには「日産自動車」「三菱自動車」の軽自動車はランクインしていない。日産はかろうじて普通車の「ノート」が9位に入っているが、三菱に至っては普通車軽自動車ともにランク外という残念な結果に終わっている。

 理由としては、二社の軽自動車に対する意識が他社に比べて低かったことが原因の一つにあげられるだろう。両社ともに軽自動車の販売はしているものの、三菱の軽は他社のモデルチェンジの回数と比べても改良のペースが著しく遅く、エンジン性能や燃費、車内空間などの基本設計が圧倒的に遅れているのが現状である。三菱車はデザインがすぐに古臭くならず、長く乗れるという声もあるが、性能が他社に遅れをとってしまうのは大きなマイナスポイントである。日産に至っては軽全車種をOEMという名のエンブレム替えで揃えているため、さして気合いをいれて売る気はないように思える。各々の社風イメージがあるため、軽自動車を率先して売る売らないが良い悪いの判断に直結するわけではないものの、日本の消費者が求める車の理想像(軽やコンパクトカー)と、二社が販売する車がマッチしていなかったことが今回のランキングに表れているのだろう。

 同様のことは以前のホンダにも言えたことである。N BOXが販売される以前のホンダの軽自動車は、スズキやダイハツに比べればさほどシェアの大きいものではなかった。ここまでN BOXが爆発的なヒットを飛ばしたのは、ユーザーが求める車がどういうものであるかという先見の明があったことや、それまでの「フィット」などの大ヒット作で培われた技術力があったこと、「たかが軽」という意識を捨てたことが大きな理由であると思う。

 確かに軽自動車は日本専売であり、居住性や耐久性、道路状況や税制の違いなどから海外で売ることは難しい。とはいえ、日本の、特に地方民にとって軽自動車は重要な足であり、近年の普通車に引けを取らない質感からファーストカーとして乗る人も多くなってきた。海外の市場ももちろん大切ではあるが、たとえ小さなマーケットであったとしても、軽自動車をないがしろにすることは、今後できなくなっていくことだろう。

 

 

 

【参考資料】

Yahoo!ニュース(レスポンス)

軽自動車含めた新車販売、アクアが首位でN BOXがプリウスに次いで3位…2012年度車名別

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20130404-00000066-rps-bus_all

 

ITmedia ニュース

危機に見舞われると強くなる“ホンダイズム” 想定以上に売れた「N BOX」誕生の物語

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1302/08/news031.html