親子関係その5 

                         110-195小松瞭太

 

 

父親の変化

 父親の形が変わってきたとされている。昔のように一家の大黒柱として立てられるといったことは少なくなり、家族の一員としてあつかわれるようになってきている。1991年全国200校の5年生、3000名を対象として、子供の目に映る父親の姿を調査したところ下記のような結果が出た。

問1夕食のとき父親を待つか  54.5%待たずに食べ始める 18.4%10分くらいなら待つ 16.8% 30分くらいなら待つ 5.1%一時間くらい待つ 5.2いつまでも待つ。

問2ご飯をよそう順番 64.7%特に決まっていない 17.2%いつも父親から 14.2%いつも子供から 3.9%ほかの人から

問3お風呂に入る順番 79.0%決まっていない 12.4%たいてい父親から 7.5% いつも父親から 1%お風呂屋に行く 

 このデータが示す限り昔のように威厳に満ち、家庭に君臨していた父親はごくわずかになったとされる。父親の姿は昔と比べ様変わりしたとされる。

 

 

父親が変わった背景

@    人間関係の異常接近 家族サイズが小さくなり父親が父親としての威厳を保ちにくくなった

A    生活空間の異常接近 住宅が小さくなり、子供たちが素顔の父親と接するようになった。

B    情報の異常接近 マスメディアの発達によって、誰でもが情報を手に入れることができるようになった。

C    経済の異常接近 賃金格差解消され、誰でもある程度の収入を得られるようになった。

戦後と戦前の日本とでは社会の構造が変化してきており、父親の姿も変わらざる得ない状況になった。父親の変化を促進させる要因は下記のものとされる。

@     職場に生きがいを見出しにくい 全体の計画を知らされずに仕事に従事し、歯車のようにあつかわれ仕事に生きがいを見出すことができない。

A     地域社会の崩壊 地域社会が機能しているなら、地域社会の活動に生きがいを託すことができる。しかし都市化などにより地域社会の活動は消滅してきている。

B     家庭内での役割を見出しにくい

C     流動的な社会の到来 知識が広く公開されている流動社会では父親の威厳が保ちにくい。

D     豊かな社会 ある程度の賃金を得られる社会では父親の威厳は損なわれやすい。

現在の日本社会では父親の威厳は戦前とは比べ物にならないほど落ちている。また職場内や地域に生きがいを見出しにくい状態になっており、家庭に生きがいを見出そうとしている。そのため戦前のような権威的な父親ではなく、現代の日本社会に適した父親になろうとしている。

 

参考文献牧野カツコ 中野由美子 柏木恵子 (1996) 『子どもの発達と父親の役割』ミネルヴァ書房