業種別のアジアの収益 事例その4 化学編(シンガポール中心)11/16
110-065 浦上竜太郎
化学メーカーの中では、半導体用シリコンウェハや塩化ビニール樹脂で世界トップの信越化学工業のように海外売上比率が68%にもなっている企業や、その一方で、海外売上比率が10%代など、さまざまな企業が混在している。その中でもマレーシアやインドネシアを中心に事業展開が長い総合化学メーカーの住友化学に関する分析を行う。
1会社概要
住友化学の2011年度の売上高は1兆9479億円であり、海外売上高は1兆90億円(51.8%)である。事業は7つの分野に分類されている。無機薬品、有機薬品、合繊原料などの「基礎化学」、石油化学品、合成樹脂、合成ゴムなどの「石油化学」、機能性材料、添加剤、染料、医薬化学品などの「精密機械」、光学製品、カラーフィルタ、半導体プロセス材料、電子材料などの「情報電子化学」、農業、肥料、農業資材、家庭・防疫用殺虫剤などの「農業化学」、医療用医薬品、放射性診断薬などの「医薬品」、電気・蒸気、化学産業設備の設計・工事監督などの「その他事業」である。
2シンガポール中心のアジア戦略
1984年3月に住友化学が中心となり進めた日本とシンガポールの経済協力事業である「シンガポール石油化学コンビナート」の操業が開始された。また、1988年12月に、完全子会社である住友化学シンガポールによる「アクリル酸・MMAプロジェクト」が開始している。他には、グループ会社のシェブロン・フィリップス・シンガポール・ケミカルズ(資本金2億8286万シンガポールドル)との連結子会社の住友化学アジアがある。このように、シンガポールでは多種の事業が行われている。他には、インドのムンバイ市に完全子会社の住友化学インディア、中国には現在は5か所に完全子会社が置かれている
3中東を跳躍台とする戦略
住友化学はサウジアラビアの国営石油企業であるサウジ・アラムコと合弁で、既存の製油所の高度化と石油化学プラントの新設により、石油精製から石油化学までの一体型の流れを作る計画を進めている。これをラービグ計画という。(現在、第一期の合弁事業が終了し、拡張のための第二期の合弁事業を進めている。)
ラービグ計画では、製造をサウジアラビアで行い、販売場所を住友化学アジア・住友化学インディア・住友化学ヨーロッパ(ベルギー)としており、ストックポイントをシンガポールと欧州の二か所としている。
参考:Chevron Phillips Chemicals ※高密度ポリエチレン製造の米国企業、オランダの総合家電メーカーPHILIPS系列ではないです。
http://www.cpchem.com/en-us/Pages/default.aspx
住友化学 海外グループ会社
http://www.sumitomo-chem.co.jp/company/group/oversea.html#areaAsia
『激動するアジア経営戦略』 2009年初版 安積敏正著