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◆職場におけるストレス
ストレスとは外的な要請と人の対処能力との不均衡であり、この不均衡は人の心身にさまざまな反応を引き起こす。それらのさまざまな反応は外的な要請やその人の認知様式にフィードバックされ、先の不均衡の程度(ストレスの程度)が変化する。
この変化は不均衡の程度を減少させる方向へ向かう場合もあれば、不均衡を増大させる方向へ向かう場合もある。(Cox and Mackey 1976)
留意点
ストレスを要請と対処能力の不均衡と考える時、過剰負荷だけでなく過小負荷もまたストレスとなること
カプランらによる研究
(Caplan, Cobb, French, Van Harrison & Pinneau, 1975; Ximbardo,1980)
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彼らは左のようなリストを作成した。 数字が高いほうが退屈さも高く、100はちょうど平均的な退屈さであることを意味する。このような退屈さとストレスとの関係を調べたところ次のような結果が見いだされた。
例えば流れ作業の労働者は決して長時間の労働でもなければ超過勤務もなく重い責任もないにもかかわらず、仕事への不満が多く、ストレスに関連する病気になりやすかった。これに対して、医師は精神的な集中を求められ、個人的な責任も重く、しばしば長時間の仕事をしなければならないにもかかわらず仕事への満足が高く、ストレスの悪影響を受けることも少なかった。
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このような研究結果から第二の留意点として、仕事量は多すぎても少なすぎても人の心身に悪影響を及ぼすということがみえてくる。かといって要請と能力との釣り合いが完全にとれている状態が最も好ましい状態かというと、必ずしもそうではないとされる。
ex)過剰負荷によるストレス
過剰負荷の影響がフィードバックされ、心身ともに疲れ仕事上の失敗も多くなってきたことに気が付く。このとき、過剰負荷を解消し要請と能力の均衡を回復する方法として二つの方向を考えることができる。
@ 外的要請の量を減らすこと
A 対処能力を高めること
前者は効果的なストレス対処法である。しかし自分の能力にあった量と質の仕事だけをおこなっていくというやり方は要請と能力との均衡を保つことになるが、能力にちょうど見合った仕事にはいずれ慣れてしまうこと、飽きてしまうこともあるに違いない。
つまり、いつしか能力が要請を超えることとなり、この過小負荷がまたストレスとなってしまう。
以上のことから、心身にとって最も好ましい状態とは、外的な要請が対処能力をほんの少し上回っている状態であると言える。このような状態は要請に合わせるために自らの能力を高めることへと人を動機付ける。この動機付けは本人にとっては人間的成長につながるだろうし、組織にとっては生産性の向上につながと考えられる。
適度のストレスは、それへの対処の仕方によって、おそらく人の環境適応にとって肯定的な機能を果たすものにもなりうるはずで、言い換えれば、ある適度までのストレスが否定的な機能を果たすか肯定的な機能を果たすかを決めるのは、それに対する人間の対処法にかかっているということである。
南隆男/浦光博/角山剛/武田圭太『組織・職務と人間行動 効率と人間尊重との調和』
株式会社 ぎょうせい1995年