パーソナル・スペース実験1 2011/5/18
109-107 沖 秀大
廊下に立っているペアを回避する歩行者の割合を調べた研究がある。(Cheyne,J.A.&Efran,M.G. 1972 The effect of spatial and interpersonal
variables on the invasion of group controlled territories. Sociometry, 35,
477-489)
それによると、男女ペアが立ち話をしているときの回避率が九三パーセントであり、立ち話をしていないときは三七パーセントであった。また、女性同士が話をしているときの回避率が九一パーセントで、男性同士のときは六八パーセントだった。
このように、男女と女性同士の相互作用がある場合のなわばりに侵入するのを私たちは回避する傾向にあることがわかる。逆をいえば、男女と女性同士のメンバーからなる社会空間は、他人の侵入を寄せ付けない力があるといえる。
さらに別の研究では、通路の両側に立っている人同士の間を通過せざるをえない状況にした場合、歩行者がどのようにしてその間を通過していくかも観察された。
(Efran,M.G.&
Cheyne,J.A. 1974 Affevtive concomitants of invasion of shared space:
Behavioral, psychological, and verbal indicators. Journal of Personality and
Social Psyshology, 29, 219-226)
これによると、歩行者は頭を下げたり、視線を下げたり、目を閉じたり、かなり不自然な表情をして通り過ぎて行くことがわかった。これは、自分を小さくすることで譲歩を示す姿勢を表しており、他人からの攻撃を抑制する効果がある。つまり、社会空間を通過する人たちは、自分を小さくすることによって、譲歩の姿勢をみせることで、「なわばり荒らし」の非礼を詫びていたといえる。言い換えれば、社会空間は他人が譲歩の姿勢を取らざるをえないような力を持っていると解釈できる。
参考文献
『人と人との快適距離 パーソナル・スペースとは何か』(1990)渋谷昌三 日本放送出版協会