なわばりとパーソナル・スペース 2011/5/11

                               109-107 沖秀大

 

 

なわばりとは、「動物の個体や集団が、それぞれの生活の場を確保するために、他の集団や個体の侵入を許さない地域。テリトリー。」という意味。

しかし、なわばりといっても、人と動物では実際にはかなりの相違がある。例えば、人はなわばりが一つであるとは限らず、状況に応じて異なるなわばりを持つことがあり、また、なわばりを共有することもある。一般に、動物は自分のなわばりに侵入してきた者に対して攻撃行動をとることがあるが、人のなわばりには柔軟性があり、他人の侵入に対して寛容であるといえる。また、人は生物学的な必要性(巣作り、繁殖、採食、休息)からだけではなく、自分の欲求(遊ぶためや土地の所有など)を満たすためになわばりを利用していると考えられる。

 

では、パーソナル・スペースとなわばりはどう異なるのだろうか。ロバート・ソマーは次のような違いを指摘している。

 

@    なわばりは比較的固定であるが、パーソナル・スペースは持ち運びされる。

A    動物や人は、他者に見えるようになわばりの境界に目印をつけておくが、パーソナル・スペースの境界は見ることができない。

B    パーソナル・スペースにはその中心に体があるが、なわばりにはそのような中心はない。

C    動物はなわばりを守るために戦うが、人間の場合、パーソナル・スペースに他者が侵入したときには、自分が引き下がることでこれを守ろうとする。

 

つまり、パーソナル・スペースは人とともに持ち運ばれ、その人がいなくなると存在しなくなるなわばりだといえる。人そのものが目印になっているともいえるだろう。

 

 

 

参考文献

『人と人との快適距離 パーソナル・スペースとは何か』(1990)渋谷昌三 日本放送出版協会