通貨危機の伝染  108-085大野 瑛介

                           2011/10/14

 

はじめに

 

 通貨危機が起こった際、それが他国に伝染する場合がある。アジア通貨危機がタイから、ラテンアメリカではメキシコ危機からといった具合に。今回はなぜ通貨危機が伝播していくのかについて述べる。

 

4つの仮説

 

 危機の伝染を説明するには4つの仮説があり、それらはそれぞれ一定の説得性を持つ。

ポートフォリオ再建仮説は、投資家がある国で損をすると他国のポートフォリオ(金融商品の組み合わせ)を再調整しなければならない。例えばアジア危機においては、欧米と日本の金融機関は被害を負った国々に債権を持っていた。これらの金融機関がタイで起きた損失をほかの国々のポートフォリオで埋め合わせたと考えられる。しかし、この仮説には、投資家がほかの地域のリスク管理に失敗したからといって、他の地域の利益の上がる可能性がある商品を手離すか、疑問が残る。

取引連結仮説は、さらに二つの説に分けられる。ある国の危機は商業的に結びつきの強い国に影響を与えるという説と、危機によって当該国の通貨価値が低くなり、同じような輸出品を扱う国に対し競争力が高くなるという説がある。

第三に、金利の引き上げや石油価格の上昇といった変化が周辺国に共通のショックという形で影響を与えるという説。

最後に期待の変化説。これは、ある国の経済に頑健性が欠けていること、或いはIMFが債務の再建に乗り気でないことに投資家が気づき、危機意識に目覚めた結果投資を引き上げたという説である。

 

まとめ

 

なぜ、タイで通貨の下落が起こった際に、それがアジア全般に伝播したか。財政状態自体、周辺国は良好であり、アジアから投資家が一斉に投資を引き上げたのか。上の説の中で最も説明しやすいのは取引連結仮説であろうが、それでも不十分に感じた。次回はこの部分を掘り下げていきたい。

 

参考文献

『国際金融危機の経済学』(2007)