メキシコ危機2     2011/09/19

 

 メキシコ危機は最初の本格的な資本収支危機であり、アジア危機の先駆けとなるが、以下の三点でアジア危機と異なる。

 

 第一に、メキシコ危機は、資本流入の対象が国債であり、財政赤字が経常収支赤字の主な原因であった。しかし、アジア通貨危機の場合、対外借入が中心であり経常収支赤字の原因は民間部門の投資拡大であった。

第二に、メキシコ危機の場合は、救済すべき対象が国債の償還であった為、支援が有効であった。

第三に、アメリカの機関投資家がメキシコ投資の主体となったことから、危機発生後、速やかにアメリカの強い支援が得られたことである。

 

メキシコ危機の影響

 

アメリカ政府の大規模な支援は、危機の伝播を防いだものの、一方で、民間機関投資家のリスク認識を弱めることにもつながった。

また、IMFの融資政策面でも重要な示唆となる。緊急時の迅速な大量の外貨供給による流動性の確保が重要である点。また、アメリカの政治的かかわりがIMFの支援の速度や規模に影響する点である。アジア危機の場合は、アメリカの関心が低く、IMFの動きにも影響を与えた。

 

 

 参考文献

IMF(国際通貨基金)使命と誤算』太田英明(2008)中公新書