新興市場経済A 2011/07/01
108-085 大野 瑛介
Calvo [2005]やEichengreen and Hausmann [2005]は、開発途上国は慢性的な資金不足にあり、経済成長が活発なEMEは海外からの資金取り入れ需要が高いことを挙げている。その上で、長期資金の調達には、信頼性の低さから困難が伴うこと。それに伴い海外からの短期資金に頼りがちになってしまうことは避けがたいとしている。これは政策の失敗を表さない克服不可能な原罪であると述べている
ただし、Calvo [2005]やEichengreen and Hausmann [2005]の議論は少なからず誇張されている所がある。
先進国全体から開発途上国への純投資は、経済理論が予想するよりずっと小規模である点(Lu-cas[1990])。開発途上国の企業のうち、国際市場で資金調達を行っているのはごく一部の優良企業であり(Claessens and Schmukler[2007])、国内市場に問題がおこっても大きな影響を受けにくいと考えられる点から、EMEが脆弱であるとするには、潜在的で克服不可能であるだけではない別の要因があることも考えられる。
EMEの多くの国々で、自国通貨建ての債権比率が5割を上回っており、EMEというだけで、海外の短期資金に依存せざるをえないとは言えないであろう。
参考文献
『岐路に立つIMF』国宗浩三(2009) アジア経済研究所