IMFの不適合 2011/5/20
従来のIMFは短期資本の流出入ばかりを促進し、中長期的に成長に貢献しうるFDIのような資本流出入項目を疎かにしていた。
2000年代以降、アジアやラテンアメリカでは資本規制や管理は強化されており、08年以降の危機に伴う株価調整の中で、深刻な事態にはなっていない。これは。各国の資本規制監視強化や、柔軟な為替制度が十分に機能しているといえるだろう。
平成十年のIMF世銀年次総会で、当時の宮沢喜一大蔵大臣はIMFの経済成長プログラムにおいて以下の提言をしている。
第一に、現在の危機が従来の経常収支の悪化ではなく、資本収支の悪化によるものであり、金融の引き締めや財政収支の改善が必ずしも有効でないこと。
第二に固定相場を維持することで、為替リスクを引き起こし短期の資本流出を招いたとみる一方で、危機以降変動相場に移行したせいで、さらに通貨の暴落を招いた例もあり、どのような為替制度がプログラムにおいて有効であるかを再考する必要があること。
第三に、各国の状況を考慮して資本自由化を推進するかを決め、場合によっては急激な資本移動をしている国を保護するプログラムを組むべきであること。
第四に、構造問題の改革も、各国の社会情勢を考慮する必要があり、また、当該国の文化あるいは発展段階を考慮したプログラムを組むべきであること。
第五に、アジア通貨危機において、債務者側も債権者側も民間セクターが中心であり、IMFの公的支援を民間セクターの救済に充てては、モラル・ハザードの観点からも芳しくないこと。
以上の提言の中には、前回までの研究で取り上げたところも多々あり、アジア通貨危機の問題点を明確にとらえていることが伺える。
参考資料
http://www.mof.go.jp/international_policy/imf/statement/annual_meeting/le044.htm
参考文献
『IMF(国際通貨基金)使命と誤算』(2009)太田英明 中公新書