資本規制のメリットとデメリット 2011/5/11
前回の研究で、資本自由化が必ずしも途上国の経済発展に寄与せず、むしろ経済を不安定化させるリスクを高めるとの結論を得た。
今回は、前回とは反対に、資本規制によるメリットもともに述べる。
資本規制措置には、国際金融市場が悪化した際に、海外市場の投資家の短期売買による資本流出を抑える役割を果たす役目がある。
アジア通貨危機においては、資本の短期流出による各金融機関のバランスシートの悪化が問題を深刻化した経緯がある。
また、国内の財政金融政策の独自性を維持しやすいことも挙げられる。とくに小国の場合、海外金融資本の悪影響を抑え、安定した経済政策を実現しやすい。
一方、IMFは資本規制のデメリットとして、流出規制は資本逃避を助長し、長期的にデメリットが大きいことと、特定業者との癒着による腐敗が起こりやすいことが挙げられる。
しかし、マレーシアが資本規制により逸早く危機から立ち直った事実から鑑みると、少なくとも危機に際して、資本規制は有用であるといえるだろう。
IMFは2011年4月5日に資本規制容認に関する内部指針を打ち出したことを電子メールで発表。その後、4月16日に行われたIMFC(国際通貨金融委員会)において、新興市場諸国は巨額の資本流入に対する政策ガイドラインを課すことを狙ったIMF計画案を、むしろ政策を制約しかねないとして拒否した。
この一連の流れは、IMFが経緯はどうあれ、資本規制の有用性を認めたことを示している。
参考文献
『IMF(国際通貨基金)使命と誤算』(2009)太田英明 中公新書
参考資料
http://jp.wsj.com/Finance-Markets?node_223902(閲覧日2011/5/11