資本自由化がもたらすリスク 2011/4/22
従来IMFは資本自由化を推進してきた。しかし、資本自由化にはプラス面とマイナス面が存在する。プラス面として、短期間に国内貯蓄を緩和し、海外からの資金により生産や投資を拡大させ、経済発展に寄与する可能性がある。マイナス面として、金融面の対外依存が拡大し、投資家が資本を引き揚げた場合、資本流出によって為替の下落と対外債務の拡大を引き起こす。このマイナス面の際立ったものが経済危機が起こるリスクが高まることである。資本収支危機と呼ばれ、アジア通貨危機はその典型である。
とくに途上国の場合、早い段階から資本・金融自由化を進めると、中長期的にみて、所得消費の不安定化と構成水準、成長率の低下を招きやすい。途上国が経済発展の早い時期に資本自由化をすることで、以下のリスクを引き起こす。
第一に、経済変動リスクを高め、安定的な経済成長の足止めとなりうる。第二に株式・債券などは短期流出入が大きい為、当該国経済の成長に殆ど貢献しない。第三に、リターンの高い海外の証券投資に資金が流出し、国内貯蓄率向上のメカニズムが育たず、国内投資が不足する。
過去の歴史から見ても、金融・資本自由化を行い、対外借り入れを増加させた途上国は不安定な経済成長をしている。
1990年代からの資本自由化の進展はアジア通貨危機の原因であることは明らかである。さらに韓国への支援でも資本取引の自由化が融資の条件となっていた。
2008年以降の経済危機でIMFが支援したヨーロッパ中小国はそのほとんどが資本自由化を進め、対外借り入れが増加していた。世界金融危機により欧米の金融機関が資金を引き揚げたため、多くが危機的状況に陥った。これらの状況はアジア通貨危機当時の状況とほとんど変わりない。
現在ではIMFも金融資本市場がある程度で異熟してから自由化するべきとしている。しかし、現状でもIMFは危機に際して短期資本規制を行うことを認めてはいない。
参考文献
『IMF(国際通貨基金)使命と誤算』(2009)太田英明 中公新書