IMFの功罪1       2011/4/15 108-085 大野 瑛介

 

アジア通貨危機の性格とIMFの誤り

 

 アジア通貨危機の性質は、当時は初めての、本格的な資本収支危機であった。すなわち、外国からの投資の引き上げが本質的な理由であり、それにより資本が流出したのが原因である。

 しかし、IMFは従来通りの経常収支危機に対する処方箋を適用したために、政策が不適当なものになった。

 

 経常収支の改善

 経常収支の赤字とは、輸入の超過を表す。

 改善には緊縮財政を適用することが必要である。そうすることで、国内の需要が減少し、輸入もまた減少するからである。IMFは従来通りに緊縮財政を適用させた。

 しかし、アジア通貨危機の性質は、資本の引き上げによるものであり、結果、不必要な緊縮在世により、多くの銀行が破綻し、経済活動は低迷した。

 また、短期の資本流動性の確保には必ずしも必要でない構造改革(銀行リストラや民営化)が推進され、支出削減の為に補助金が一律削減され、国民の生活が困窮し、景気が一層悪化した。

 経常収支は生産活動の低下に伴い輸入が減少することで改善したものの、不必要に景気が悪化し、経済面での損失を大きく被った。

 

参考文献『IMF(国際通貨基金)使命と誤算』(2009)大田英明 中公新書