アジア通貨危機とインドネシア  2010/5/14   大野 瑛介

 

 

不安定資金の大量流入

 

 アジア通貨危機の主な原因は、投資家心理の急変を背景とした、資金の大量流出にある。では、何故インドネシアにおいて、投資家心理に影響を受けすぎる不安定な資金が流入していたかについて、ここでは述べる。

 

 第一の理由は、インドネシアが早期に外国為替管理を自由化し、反対に直接投資を制限したことにある。インドネシアは70年代初頭には為替管理を自由化した。これは途上国として見ればきわめて早い(日本は80年代)。それに対して、直接投資は80年代前半の原油価格の急落まで外資を積極的に導入しなかった。ゆえに、金融機関や企業は投資だけではなく、海外の機関から直接借入れを重要な資金の調達ルートとした。

 

 第二に、金融セクターの脆弱性が挙げられる。金融部門は為替管理自由化から十年遅れで自由化した。この自由化の中で、実質金利の大幅な増加がおこる。この中で海外市場へのアクセスが可能な優良企業は直接海外に借入れ、国内市場にはリスクの高い借り手が残る。これによって金融セクターの脆弱性はますます上がっていった。

 

 第三に、為替レートの長期管理。インドネシアでは政府により長きにわたって為替レートが安定化されていた。その後、為替リスク調整後のインドネシアの金利高から、海外資金の流入が継続し、対外債務を増大させた。

 

 以上の理由から、海外から大量の民間資金が流入し、結果的に国内企業と金融機関は対外債務を抱えるようになり、外的なショックに対する免疫を無くしてしまったと考えられる。

 

 

 

 

 

参考文献 

黒岩郁雄(2002)『アジア通貨危機と援助政策 インドネシアの課題と展望』 アジア経済研究所