アジア通貨危機におけるインドネシアの対応   

                               4/22 108-085 大野 瑛介

 

1.    アジア通貨危機前のインドネシアの経済状態

 

 アジア通貨危機に際し、IMFの援助を受けた国はタイ、インドネシア、韓国の三か国。この中でも通貨危機前のインドネシアは、他の2国と同様以上の良好な経済パフォーマンスを持っていた。実質GDP成長率が、90年代は一貫して6~8%台の成長を遂げていた。財政収支も92年を除き黒字であり、経済危機前年の96年も1.2%である。

また、95年から96年にかけてタイ、韓国では急速な輸出の減速を経たが、インドネシアは比較的軽微に収まった。具体的には通関輸出伸び率がタイは24.7%から−1.3%、韓国は 30.3%から3.7%に急落したが、インドネシアは 13.4%から9.7%に抑えられていた。

 以上から、アジア通貨危機前のインドネシアは経済的には安定していたといえる。

 

2.    アジア通貨危機の影響、ルピアの減価

 

 通貨危機の発生に伴い、977月半ば頃からルピアには強い減価圧力がかかる。インドネシアの為替レートは管理フロート制(自国の通貨の変動幅を固定し、その範囲内で各国通貨が取引される制度)だった。711日、この変動幅は上下4%から6%に拡大され、814日には、変動相場制に移行した。同時に中央銀行は国内金利の引き上げや先物ルピア売りの上限設定などを行いルピア売り抑制を図るものの、9月末から市場へのドルの供給が止まり、ルピアは急速に減価する。こうした急速な悪化に伴い、108日にIMFに対して金融支援を要請した。

 

3.    IMF融資の条件

 

 一月の内に、インドネシア政府とIMFとの間で合意がとられ、政策内容を盛り込んだ趣意書が作られた。この趣意書に書かれたIMFの条件としては、主に財政金融政策の引き締め、金融セクターの包括的なリストラ、広範な構造改革の三つの政策を柱とするものだった。これに対し、IMFは約100億ドルの融資を決定し、同時に世界銀行、アジア開発銀行からも融資が行われ、更に二国間支援も合計すると、延べ372億円に上った。これはタイへの支援172億ドルの約2倍に当たる巨額の支援であった。

 

黒岩郁雄(2002)