アジア通貨危機におけるマレーシアの対応 2    108-085 大野 瑛介  2010/4/14

 

1 新古典派経済学とケインズ経済学

 

 一般に、通貨の固定為替レートと資本の自由な移動、自主的な金融政策の三つは同時

に成立しない、というのが新古典派経済学の中では定説である。これは貿易の自由化、規制緩和、自由な資本移動の推進をかかげるIMFとは相反している。IMF処方箋もここから来ている。

それに対しケインズ経済学の考え方ではこうした経済の自主性にまかせる対応ではなく、ある程度の期間固定的な為替レートを用いる方が好ましいと考える。また、ある程度の資本取引の規制を行った方がいいと考える。

アジア通貨危機におけるマレーシアの対応は、ケインズ経済学に寄った考え方だと思われる。

 

2 マレーシアの政策決定要因

 

 何故、マハティール首相がIMFに反する政策をとったか。第一に、マレーシア固有の開発政策が捻じ曲げられることを懸念した。マレーシアではブミプトラ政策などのマレー人優位の政策を進めてきたが、IMFの、いわゆるアメリカ型の政策理念を持ちこむことで、これらの政策を実行しにくくなることを怖れたと考えられる。

第二に、IMF型の回復政策を主張したアンワール副首相との路線対立。この路線対立が権力抗争にまで発展し、また、新政策の発表と同時にアンワール首相は失脚した。

第三に、政権内部に、ケインズ学派のエコノミストが多いこともあげられる。

 

 

 

 

 

参考 

橋本雄一(2005)「マレーシアの経済発展とアジア通貨危機」古今書院

http://faculty.human.mie-u.ac.jp/~sakuradani/higasi040313.pdf

http://jams92.org/pdf/NL38/38(02)_onozawa.pdf