アジア通貨危機におけるマレーシアの対応   108-085 大野 瑛介

                            2010/4/9

 

 

 アジア通貨危機に際し、IMFは緊縮財政、金融引き締め、外国資本の規制緩和、金融機関の徹底的な整理を推奨した。これに対し、マレーシアでは反対に、積極財政、金融緩和、外国資本の規制強化、金融機関の再編を行った。

マレーシアの経済は、IMFの指導による対策を講じたにも関わらず、98年になって悪化が進んだことが要因である。悪化の原因として、マレーシア経済が危機の悪循環に巻き込まれたことによる。すなわち、資本流出を契機として、通貨と資産価値が下落し、それが企業部門の悪化を招く。これは不良債権の増加による金融部門の不安定化につながり、信用収縮を起こし、経済危機を深化させたのである。

マレーシア政府は、19986月からインフラ整備による公共投資再開などの財政拡充政策を開始する。さらに989月に、自国の為替レートを固定相場制にした。これにより、国内金融政策の自由度が高まった。同時に資本規制の断行を行った。背景には、国内経済をかく乱する短期資本の流入をひとまず遮断した上で、その後に金融緩和政策を実行しようとするマハティール首相の意図が現れている。このような経済政策を行うことを可能にした背景には、不況の内需縮小により輸入が減少し、経常収支が大幅に改善されたことが考えられる。

当初、IMFからは異端児扱いされていた政策ではあったが、マレーシアがその後、アジア諸国の中で急速に経済を回復し始める。98年には実質GDP成長率が−7.4%だったが、99年には6.7%に上昇し、00年も成長率は8.8%であった。政府の景気回復策や、パーム油や石油などの一次産品および、外資を中心とする電機、電子産業の輸出が好調だったことが要因として挙げられる。

 

 

 

 

 

 

参考 

橋本雄一(2005)「マレーシアの経済発展とアジア通貨危機」古今書院

http://faculty.human.mie-u.ac.jp/~sakuradani/higasi040313.pdf

http://jams92.org/pdf/NL38/38(02)_onozawa.pdf