住宅ローン 頭金2割説は本当に正しいのか?

107-404    堀口 拓海

 

※住宅ローンの頭金の定説

  頭金が2割以上必要といわれる理由は、一般には民間金融機関での住宅ローンにおいて貸出額の上限を、物件価格の大体8割ほどを限度に設定しているためである。このことから、逆算により、自己資産として2割以上が目安とされているのが一般的だ。しかし、この2割という目安は本当に借りる側にとってメリットのある指標なのだろうか。

 

@    返済総額や計画を考えての指標

  頭金を多く用意できれば、当然のことながら借りる額も少なくて済む可能性が高くなる。ローンを利用する際は利息が発生するため、総返済額を考えるなら物件価格の払える部分は最初に払うほうが負担も少なくて済む。また返済中に何かトラブルが発生した場合に、資産が残っていないと住宅ローン返済だけでなく、その後のライフプランにまで影響を及ぼす恐れもある。そういう意味で考えると、住宅ローンだけに必要な資金としての頭金ではなく、準備しておくべき資金として考えるのが妥当だ。このことから、住宅ローンを借りる際に、いくらプランの中で頭金が少なくて済むとしても、これを多く用意することが私たちにプラスとなることは納得できる。しかし、これらの考え方において、必ずしも「2割」という数値が必要だという目安はどこにもない。多いことにこしたことがないだけで、論拠は何もない。

A    ローン破綻を回避するための指標

ここでは、考え方が消極的なものとなるが、返済が破綻しないことに重点を置いた考え方でこの指標を捉える。重要となるのが、住宅周辺の家賃相場だ。

 () 購入価格:4500万円 頭金:900万円(2割を想定) 住宅ローン:3600万円

    年利:3% 返済期間:25年 毎月の返済額:17716円 周辺の家賃相場:12万円

  上記の返済プランを立てたとする。当初は順調に返済していたが、ある時働いていた会社の経営が傾き倒産してしまった。そうなると収入もなくなるため返済が困難になる。この時に考えられる選択肢は以下のようになる。

 (1) 自宅(返済中)を売却して返済資金を得る。

  (2) 自宅を他人に貸すことで賃貸料を得ることで返済を図る。

 (3) 上記とは別に資金調達を行う。

  まず、(3)は選択肢としては論外である。新規で借りるにしても、親族などから借りるにしてもこのタイミングで行う行動ではない。次に(1)については、資産価値の変化による担保不足の発生の危険性がある。そのため、この方法も確実ではない。最後に(2)だが、これも上記の数値を見てわかるように5万円近くの開きがあり、使うことができない。これでは破綻である。ではこの場合、いくら頭金が必要だったのか。それは、想定賃料を基に考える。融資条件が同じならば、毎月の返済額が想定賃料以下になるよう設定しなければならない。今回では12万円以下となるように設定する必要があるため、借入総額は2530万円以下にしなければならない。(ExcelPMT関数より)これより、購入金額から差し引くことで頭金が出てくる。このパターンでは1970万円であり、購入価格の約44%の頭金が必要となった。想定賃料が変化すれば、頭金の額も変化する。やはり、ここでも頭金の目安が2割となる論拠がない。

  上記の説明から、頭金の目安が購入価格2割という考え方には性格な論拠がないのではないかと考える。

 

参考文献 URL

Nomu.com ノムコム 住宅ローンの選び方 http://www.nomu.com/loan/howto/cpt_house_atamakin.html

山崎隆  『住宅ローンを借りる前に読む本』  ファーストプレス 2009