20101217

107-347 野村 雄基

中国バブルB

結果

 結局、中国経済復活のための強力な金融支援策は、その回復力以上に、不動産・株式などの資産取引に新たなエネルギーを与えたことになった。中国のバブルは、リーマンショックでは完全に潰れ切っておらず、実体経済の回復に先んじて復活を遂げることになったのだろう。金融緩和の栄養は、実体経済の傷を癒すよりも、より優先的に投機活動に多大なエネルギーを与えて、資産バブルの芽を育んでしまったのである。

 

 上海、香港では、金回りが良くなった富裕層たちが、日本円で4憶〜5憶円相当の超高級・高層マンションに積極的に投資を行っている。飛ぶように売れる高級物件をみて、建設業者は高層マンションの建設をさらに活発化していく。香港では住宅市場が供給不足に陥り、一部の高級不動産は1平方メートル当たりの地価が、世界最高水準に達つぃたところがあるという。投機の波に乗った人々の中から数多くの富裕層が生まれ、中国では今後5年間で富裕層の人数が倍増するという観測もある。日本からみれば、経済格差の拡大が政治問題化するような環境ではあるが、経済成長のスピードが速く、豊かさの水準が底上げされているときには、そうした矛盾が政治的にたたかれにくいのであろう。

 

参考文献

熊野英夫『バブルは別の顔をしてやってくる』日経プレミアムシリーズ(2010