2010年12月10日
107-347 野村 雄基
中国バブルA
中国国内で過剰流動性が膨らんでいるのは、海外から流れ込むホットマネーという外圧だけではない。内圧として、銀行貸出が活発に伸びて、その資金が資産取引に使われていることも、バブルの大きな推進力になっている。中国のバブルは、先のホットマネーと国内の金融緩和が相まって起こっている。
発端は、経済対策というカンフル剤が強く効きすぎたことにある。中国政府は、リーマンショックに続く景気悪化懸念に対処するために4兆元(53兆円)の超大型経済対策を打ち出した。まず自動車や家電製品を農村に普及させる「汽車下郷」や「家電下郷」を消費振興策として導入された。そして中国人民銀行は、リーマンショックのあった2008年9月に貸出金利を引き下げ、6年ぶりに預金準備率も引き下げた。同時に、2009年に5兆元以上を目標をと設定して新規貸出の増加を計画した。この新規貸出の増加は、4兆元の経済対策を金融面からバックアップして、事業者が公共事業などの資材仕入・機器購入・設備投資を円滑化することを企図していた。2008年夏まで引き締めスタンスで臨んでいた窓口指導を転換して、政府は銀行が貸出をどんどん増やすように指示し始めたのである。
この中国の景気支援のポリシーミックスは、金融面のほうが予想以上に実績を上げることになる「5兆元以上」という貸出増加の目標は、早々と2009年1月〜3月にプラス4.6兆元の新規貸し出し増加でほぼ達成され、4月まででプラス5.2兆元とたった4ヶ月で年間目標をクリアーした。その実績は、2009年中はプラス9.5兆元へと膨らんだとみられる。
貸出の使途は、半数がインフラ整備のための事業資金に回ったという見方とともに、残りの半数が不動産や株式のような投機に使われたという見方がある。
問題なのは、貸出急増に反応してマネーサプライが2009年末には前年比3割増へと膨らんだことである。インフレ率を大きく上回る貸出残高・マネーサプライの増加が起こっているとき、その超過分のマネーはどこかに消えてしまっていることになる。貸出残高・マネーサプライの増加が起こっているとき、銀行から企業に融資された資金は事業用決済に使われて、他の事業者の当座預金に流れ込む。事業用決裁は、2009年の名目GDPの3〜6%の伸び率に対応すると考えられるので、マネーの伸び率が超過している部分は金融市場の膨張に対応していると思われる。そしてその超過している伸び率2割強の部分が、資産バブルを含めた資産取引の拡大に用いられたマネーということだろう。
参考文献
熊野英夫『バブルは別の顔をしてやってくる』日経プレミアムシリーズ(2010)