2010年10月22日
107-347 野村 雄基
バブルは繰り返しやってくるA
バブル崩壊後のメカニズム
バブルが潰れるとそのときは景気悲観論に支配されがちだが、その中で新たなバブルの芽が育つことがある。バブル崩壊が中途半端にしか起きていないときは、投機の芽の復活は早い。なぜならば、皆が悲観にくれているときは、率先してリスクをとろうという者がいなくなり、未開拓のチャンスが数多く放置されているからである。実体経済と資産価格の間に、「売られすぎ」という歪みが生じて、裁定取引の機会が広がる。勇気のある投資家ならば、その不可思議な状態に気付きさえすれば、ほんの少しリスクを覚悟するだけで、驚くほどに大きな先行利得をあげることができる。リスクを恐れないメリットが最大限に発揮されるのが、不況の最終局面で、しばしば、「不況のときほどチャンスが到来する」と言われるのは、不況時にリスクを感じない人だけに成り立つことだと言える。
これを具体的に言えば、2003年に日本の不動産投資を仕掛けた人は、その後の都心部での地価上昇の恩恵を受けることができたし、2005年前半に株式投資のデイトレードを始めた人は、投資額をすべて賭け続けることで巨額の鞘取りができた。2000年代に入っても、日本の企業・金融機関がリスクを抱えることにきわめて慎重だったのに対し、海外投資家と一部の個人投資家はアクティブに行動して2005年〜2007年の時期に多大な収益を稼ぎ出した。
これらの上昇局面では、時間が経過して先行者たちが多額の利益を上げたことが公に語られる段階になると、慎重なスタンスを決め込んでいた大多数の人々が、徐々に重い腰を上げて追随する。そのような段階になると、もはや当初の超過利潤は解消してしまっていることが多い。多数の追従者たちは、悲観の中でチャンスを見出すのではなく、楽観的なご神託を頼りに参入を決めていく。悲観しすぎの不均衡が、やがて楽観しすぎの不均衡を生み出す原因をつくる。振り子が正反対に向かっていくところが、バブル生成のミステリアスな性格である。
参考文献
熊野英生『バブルは別の顔をしてやってくる』(2010)日経プレミアムシリーズ