20109月7日

                                                           107-347 野村 雄基

                             ウォール街の大暴落

 チューリップ・バブルも南海バブルも、今となっては古い話である。同じようなことが、進歩した現代社会でも起こりうるのだろうか。そこで次にアメリカの歴史を振り返り、なじみの深い例を見てみる。

 

背景

投機の舞台として、環境がこれほど整ったことはかつてなかった。その時のアメリカは比類なき繁栄の極みにあり、アメリカのビジネスに信頼を置かないというのは不可能だった。1928年に入ると、株式投機は国をあげてブームとなり19283月から299月初めまでの1年半の間の株価上昇率は、それまでの5年間に匹敵した。だが、一般に考えられているほど、全国民が株式投機にうつつを抜かしていたわけではないが、少なくとも投機は過去の狂気の時代と同様に広範な広がりを見せており、その度合いも過去に例がなかった。より重要なのは株式投機が当時のアメリカ人の生活の中心を占めるようになってしまったということだ。

 

プーリング操作で大衆を手玉に

 この時、砂上の楼閣作りの手助けをしたいと、投資家に愛想笑いを浮かべて近づいてくる証券業者がたくさんいた。株価操作は、そのひどさの度合いにおいて最高潮に達していた。その最たる例はプーリング操作である。プーリング操作によって、どのように株価操作が行われたかを説明する。

 

 プーリング操作は一方で緊密な協力者を必要とし、もう一方では大衆投資家を徹底的に手玉にとるものである。一般に、プーリング操作は何人かのトレーダーが手を組んで、特定の銘柄を操作する。その中で、才があるとされるものがプール・マネジャーに選ばれる。プール・メンバーは通常、取引所のスペシャリストを自分の味方につけて、取引に参加する。スペシャリストとはブローカーのブローカーで投資家から注文を受けて実際に証券取引を行う人である。つまり、スペシャリストを味方につけることは、現在の株価以下の買い注文と、現在の株価以上の売り注文がどれだけ来ているかがわかるということであり、一般投資家がどのような形で市場に参加しようとしているのかがわかるということである。

 

 この段階で、プール・マネジャーはプール・メンバー同士で売買キャッチボールをさせる。例えばAはある銘柄をB40ドルで200株売却し、Bは同じ銘柄を41ドルで再びAに売り戻すのである。これらの売買は全国にティッカーテープを通じて流れ、アメリカ中の証券会社の店頭に押しかけてテープを見つめる大衆投資家に架空の取引があたかも現実のように伝達される。このような活動は見せかけの取引なのだが、まだ一般に知られていない材料に基づいて、何か大きな取引が背後で行われているかのような印象を作り出すのである。またそれを作り出すために、プール・マネジャーに買収されている予想屋や市場解説者たちが、わくわくするようなことが起きようとしていると伝える。またプール・マネジャーは、会社にも手を回して発表されるニュースもいい話が増えてくるように根回しする。そしてテープ操作と管理されたニュースの流れの歯車が噛み合うと大衆は大抵乗ってくるのである。

 この全員参加のゲームにいったん大衆が乗ってくるとその時こそプロがこっそり栓を抜く時だ。今や大衆が買い向かってきたために、プール側は売りに回る。プール・マネジャーは大衆投資家が気づく前に、はじめは少しずつ、そして次第に大量の株式を、市場に供給する。結果、ジェットコースターのような値動きのなかで、プール・メンバーは多額の利益を上げ、大衆は気がついた時には、急落した株式をつかまされているのである。

 

株価崩落

 19291024日、株価は垂直的に暴落、世界大恐慌の引き金を引く「暗黒の木曜日」となった。いったん崩壊が始まれば、信用取引の追い証の圧力と情報の混乱が心理パニックに拍車をかけ、大銀行による買い支えも群衆のろうばい売りの勢いを止められなかった。最終的に株価は最高値の7分の1に下落し1929年のピークを回復をするまでに22年もの歳月を要することになった。

 

まとめ

 バブルに共通していることは、バブルが起こる要因はちゃんとあって、しかもそれはきちんと見れば、誰が見ても市場に対する負荷が大きいとわかるものだが、大衆はそれを知ることができなく、逆にその負荷を多くしてしまっている。そして気づいた時にはバブルが起こり大衆は大損をし、一部の者は大儲けをするというものだった。

 

感想

こうしてバブルをみてみると、人間は痛い目にあいながら、数十年間のなかで何度も同じような過ちを繰り返している。人間の記憶というものはとても短命で、人間は過去の教訓をあまり生かせないのだと思った。大事なことは、どうせバブルはまたおこってしまうのだから、短期間に手っ取り早くお金を儲けられそうな投機に、お金をつぎ込みたくなる誘惑を振り払い、バブルに関わらないことだと思う。

 

参考文献

バートン・マルキール著 井出正介訳

日本経済新聞社『ウォール街のランダムウォーカー』(2007