2010年2月15日
107-347 野村 雄基
投資の行動心理学(5)
サンクス・コスト効果
株式投資は、複雑な人間心理の絡み合いによって成り立っている。それは個人レベルでも集団レベルでも同じで、個人の中であっても、様々なしがらみが存在する。
例えば、心理学的な言葉で言う「サンクス・コスト効果」もそれにあてはまる。サンクス・コスト効果とは、先に支払ったコストが後の選択に大きな影響を与えることを言う。
サンクス・コスト効果を簡単に説明すると、例えばノートパソコンの調子が悪く、修理に出したところ液晶画面の取替えとなり、4万円払ったとしよう。しばらくパソコンは快調に動いていたが、今度はCPU、ハードディスクなど次々に、悪くなり、店に相談したら6万円かかると言われた。この時、あなたならどうするだろうか。先に4万円修理代を投資し、今度は6万円である。これに少し足せば新しいそれなりの物が買えてしまう。当然、今のパソコンを諦め、買い替えを考えるだろう。しかし、それでは先に投資した4万が無駄になってしまう。結局6万円追加で支払って修理してもらうことにした。ここで注意してもらいたいのが先に投資した4万がなければおそらく買い替えを選択しただろうと言うことだ。
株式投資におけるサンクス・コスト効果の代表例は、「ナンピン買いだ」。ナンピン買いとは、自分の所持している株の株価が下がったとき、少しでもその株の平均購入価格を下げるために買い増しする行為である。リスクを減らすための増資といって良いだろう。しかし、実はナンピン買いを行うことで、売りにくくなる。投資家は「こんなにお金をかけたのだから、今の株価では売れない」という心理が働くのだ。サンクス・コスト効果の怖いところは先に投資したコスト(金と時間)が大きければ大きいほど、心理的効果が増幅され、最悪の場合、投資家に壊滅的な打撃を与えるところだ。投資をするときは、労力を注いだとしても、継続するのが損とわかればスパッと止める身軽さも重要である。
参考資料
サンクス・コスト効果:株式投資と心理
http://www.kazokukotoba.com/kabu/2009/09/post_25.html