20091211

107-347     野村 雄基

投資の行動心理学(2

 

持ち値の呪縛

 持ち値とは自分の保有している平均購入単価である。例えば、1000円で購入した株式が20%値上がりして1200円になると売却してしまう投資家が、逆に20%下落して800円になっても売らないというのはよくあるケースだ。これは前回述べたプロスペクト理論で説明できる。

 しかし、もし同じ800円で取引されている株式の購入単価が500円だった場合、800円でも売却してしまうという投資判断をする個人投資家がいるとすれば、それは買った値段に投資判断が影響されてしまっていることを意味する。買った値段(持ち値)によって投資判断を左右されることを「持ち値の呪縛」という。

 投資の売りタイミングを判断するのはいくらで買ったか、ではなく、今の株価は本来の価値に見合ったものであるか、である。つまり800円で取引されている会社の価値が1株当たり800円以上あると思えば持ち値に関係なく保有すべきであるし、その逆なら利食いや損切りに関係なく売却すべきである。

 多くの個人投資家は、自分の買った値段で投資判断を変えてしまうことによって、本来あるべき投資判断の基準を実践することができなくなり投資の成果を得られにくくなっている。

 

認知的不協和

 認知的不協和とは、自分が認知している状況と矛盾するような事実に遭遇する時、その状況を解決しようとする心理のことである。投資においてはある株式が値上がりすると思って購入したのに、株価が下がっていくような場合が典型的である。

 このような場合、最初は自分の考えと相場の不一致を解決するために「市場は何か間違えている」といった自己を正当化する考え方を持つようになる。しかし、さらに株価が下落すると正当化することが困難になるため、矛盾を意識させられる相場自体から目を背けるようになってしまう。

 しかし相場が下落した時こそ、対策をしっかり考える必要があるわけで、認知的不協和を放置しておくと投資の成果にはマイナスの影響が出てしまう。

 

参考文献

内藤忍『内藤忍の資産設計塾』自由国民社(2008