20091120

107-347野村 雄基

                             住宅ローンとの付き合い方

 

 住宅ローンは個人のバランスシートで言えば負債に当たるものであり、負債を有することによる資産への影響も小さくない。計画前にそのリスクとコスト、資産運用や将来への影響についても十分に検討すべきである。「お金持ちになる黄金の羽根の拾い方」の著者である橘玲氏は「住宅ローンとは、金融機関からお金を借りて不動産投資をするレバレッジ取引」と喝破した。

 

固定で借りるか変動で借りるか

 住宅ローンの選択の一番のポイントは、固定金利か変動金利かという選択である。最終的な損得は、住宅ローン返済期間中の金利変動によって決まってくる。したがって判断の基準は、どちらがリスクが高いかということになる。

 住宅ローンの返済は長期の負債であり、今後、人口減少、高齢化、公共事業の削減などによって不動産に対する環境は大きく変化する。また、金利の上昇や円安の進行といった相場の変動リスクもある。2年や3年といった短期的な視点ではなく、10年単位の長期の可能性から慎重にリスクをコントロールすることが重要である。

 

住宅ローン返済と資産運用のどちらを優先すべきか

 住宅ローンを返済しながら資産運用をしている人にとって次に問題になるのが、住宅ローンの繰り上げ返済と資産運用と、どちらを優先させるかである。

 負債を減らし、家計のバランスシートを軽くしていくのが原則だが、住宅ローンの返済を最優先した場合に、ローン完済後に資産運用を始めようと思っても時間もノウハウも吸収できない時期になってしまっては手遅れである。

 現実的には自分のローン残高を確認しながら、最悪の事態になっても住宅ローンの返済に支障が出ない範囲で、資産運用を早めに始めるべきである。ただし住宅ローンの返済金利より高いリターンが実現できなければ、資産運用することがかえってマイナスのリターンになるので、返済計画に支障が出ない範囲にリスクを限定する必要がある。

 

持家は外車とおなじ嗜好品

 賃貸物件に住めば、住宅ローンは必要なく、経済的合理性から考えれば、ローンを組んでの持ち家は割に合わない。同じ物件で持家と賃貸でどちらが得かといった比較があるが、実際には金利情勢や将来の不動産価値によって損得は変わり、どちらが有利とは一概に言えない。持家のデメリットは住む場所が固定されてしまい、家族構成の変化や近隣環境の変化に対応しようとすると大きなコストがかかってしまうことである。

 買う買わないは本人の選択であり、持家を否定するわけではないが、持家とはリスクと引き換えに、所有する満足感自分の好みの家に住める満足感を得るものだという認識を改めてすべきである。

参考文献

内藤忍『内藤忍の資産設計塾』自由国民社(2008