2009年9月8日
107-347 野村 雄基
REIT(上場不動産投資信託)
REIT(リート)とはReal Estate Investment Trustの略で、日本語では不動産投資信託と訳す。 REITは投資家から集めた資金等によって、REITのために設立された法人である投資法人が不動産を保有し、運用した収益(賃料収入や売却益)を投資家に分配する金融商品である。個人投資家の不動産投資というと今まではワンルームマンションなどが対象だったが、これは投資金額が大きく、また1つの物件だけにリスクが集中するなど様々なリスクが挙げられる。これらの問題点やリスクをかなりの部分解決できる商品がREITである。
REITの仕組み
REITは会社型投資信託(投資法人)と契約型投資信託(委託者指図型・委託者日指図型)の2つに分類される。現在、上場しているREITはすべて会社型投資信託である。
REITから分配金を受け取る仕組み
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本図はあくまでイメージ。 |
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REITは年2回決算の銘柄が大半。 |
REITのメリット
n 比較的、手の届く範囲で投資できる
30万円〜120万円程度で投資が可能であり、実物不動産への不動産とは違い、比較的手の届く金額で投資できる。これまで実物不動産への投資は最低でも数千万円の資金が必要だったが、REITでは数十万の単位まで小口化され不動産への投資が容易になった。
n 安定した分配金、相対的に高い利回り
投資家への分配金は、多数の物件からの賃料である。投資法人の収益の90%異常を投資家に配当するなど一定の要件を満たせば、投資法人に法人税がかからない税制になっている。通常株式では法人税等が利益から差し引かれるが、REITは利益の大部分が還元されるため、分配金が比較的他の金融商品より高くなる。
n 値動きの穏やかな商品
REITの値動きとは株式に比べて非常に穏やかである。購入してすぐに株価が倍になることということもない代わりに、半値になるということもない。したがって、常に価格の動向に注意していなくても大丈夫である。
n リスク分散の効果
REITは不動産の専門家が複数の物件に投資して運用するので、個人が実物不動産に直接投資するよりもリスク分散の効果がある。また個人レベルでは難しい不動産の管理・運営についても、不動産の専門家が行う。また不動産に資金の一部を振り向けることは、分散投資の観点からみても意味のあることと言える。例えば、都心のオフィスビルの空室率はテナント契約の更新のタイミングから、景気に対して遅行性があると言える。このように株・債券といった商品とは異なる価格変動が予想されることから、合わせて投資することで分散投資効果が期待できる。
n 流動性の高さ
株式と同様に、全国の証券会社を通して証券取引所で売買ができ、株式と同様の換金性や流動性が得られる。また、証券取引所のルール等により、REITの資産や運用状況などについての情報開示が義務付けられ、透明性が向上する。
以上のようにREITのメリットは小口で流動性があり、利回りが高くプロが運用してくれる分散投資型の商品であるということである。
REITのデメリット
n 投資情報の不足
投資情報の不足とは投資判断のための情報を収集するのが難しいということである。目論見書には物件の詳細な情報が開示されているが、組み入れている不動産の質(築年が浅いか、長期優良テナント案件が多いか)や空室率についての見通しなどの評価には専門的な知識が必要である。また情報があったとしても分析ができなければ、投資判断はできない。これらの不動産の質の分析は、素人にはなかなか判断できなく、さらに投資家が当然知りたいと思う「賃料はいくらか、テナントには何が入っているのか」などの情報はディスクローズされない。
n 親会社と不動産投資法人との利益相反
投資法人は自ら資産運用を行わず、資産運用は運用会社が行うことになる。運用会社の株主となっている不動産会社も不動産を保有し、管理事業などを行っていることから、REITの事業と競合する。その結果、REITの投資家に不利益がもたらされる可能性がある。例えば、運用会社が物件を管理するプロパティ・マネジャーの選任にあたり、運用会社の株主である不動産会社やその子会社を優先したり、通常より高い報酬や有利な条件で契約する可能性がある。また、不動産会社が子会社の運用会社を通じ、投資法人に対して、自社物件を適正価格より高値で売却したり、不良物件だけを選別して売却するリスクが挙げられる。
REITの分類
REITの分類方法はいくつかあるが、投資対象の分類、投資地域による分類、決算期による分類などを知っておくと銘柄選択の参考にすることができる。
Ø 投資対象の分類
オフィスビルに投資するもの、ショッピングセンターに投資するもの、居住用不動産投
資するもの、その他、に分類できる。
Ø 投資地域による分類
東京の物件に投資するもの、地方都市の物件に投資するもの、全国に分散して投資する
もの。
Ø 決算期による分類
決算期に違いは、分配金の支払い月の違いになる。REITに複数銘柄投資し、決算期をずらすことによって毎月分配金を受け取れるようにしている投資家もおり、分配金の受け取りを分散できる方法としてある。
REITの税金
REITの税金は、分配金と売却益に対してかかる。分配金は20%の源泉徴収で、売却益は株式と同様の取り扱いで20%の申告分離課税となる。
参考資料
内藤忍『内藤忍の資産設計塾』自由国民社(2008)
三菱UFJ証券 http://www.sc.mufg.jp/
リートの基礎知識がバッチリわかるサイト http://cecilian.biz/reit/about.html