平成20年5月16日
「消費者はどのようにして買うものを決めるのか」
小野寺 宏
ブランドの絞込み
消費者はどのようにして購買意思決定を行なうのだろうか。一般的にはどの製品カテゴリーにも複数のブランドが存在する。製品カテゴリーによってはその数は相当なものであり、小売店にすべてのブランドが置かれることも、また、消費者が全てのブランドのあらゆる属性を検討した上でブランドを選択することも困難になっている。
入手可能集合→知名集合→考慮集合→選択集合
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非知名集合
一般に、消費者はブランド数が多いと感じると、ブランドの絞込みをする。絞込みの過程では、最初に市場で入手できるブランドの集合(入手可能集合)から自分が知っているブランドの集合(知名集合)へと絞り込む。次に、情報収集をしながら購買の検討対象となるブランドの集合(考慮集合)へと絞り込み、最終的には購買対象となるブランドの集合(選択集合)へと絞り込んでいく。そして、選択集合から特定のブランドを選択するのである。
これらの集合は固定的ではなく、小売店の品揃えが変化したり、メーカーのコミュニケーション戦略や口コミにより新たに別のブランドを認知したりすると、変化していく。
ブランドが購買されるためには、消費者の考慮集合に入ることはもちろんであるが、それ以前に知名集合に入っている必要がある。そして、小売店等の販売チャンネルで製品を扱ってもらい、入手可能集合に入っていることが大前提となる。企業は様々な手段で自社製品に関する情報発信を行い、そしてそれを継続する必要がある。
ところで、消費者は企業のコミュニケーション戦略などの影響を受けなくても、ときには新ブランドやよく知らない製品を試してみたいという気分になることがある。自分の買い物の仕方に飽きや物足りなさを感じたり、刺激を取り入れたくなったりしたときに生じる。特に、気分がよいときや、自分の環境に刺激があまりないときに生じやすい。このような行動は多様性追求と呼ばれている。多様性追求行動が行なわれる場合には、考慮集合に入るブランドは大きく変化し、一部の自分が知らないブランドも含まれる。この状況は、それまでには考慮集合に入っていなかったブランドにとってはチャンスとなる。このチャンスをものにするためにも、斬新なパッケージの作成、興味を引くメッセージや買う理由の提示など、消費者の購買意欲をそそる工夫は不可欠である。
<参考文献>
白井美由里(2006)『このブランドに、いくらまで払うのか』日本経済新聞社