平成21年10月16日
同人誌市場(4)
106-106 奥出拓摩
同人誌の展望
循環システムが円滑になりオタクコンテンツ産業が活性化するためには、ファン層への定期的な起爆剤の投与が必要となる。原作への投与はもちろん、メディアミックス展開を行うことも有効である。しかし、メディアミックスは常にリスクを伴う。一度商業ベースで失敗した作品を仕切り直すには膨大なコストがかかる上、原作ファンには過去のメディアミックス展開自体が汚点として記憶されているため、自然とその関連作品への期待値が低くなってしまう。ゆえに、原作と異なる媒体で作品展開をする場合には原作を深く理解し、ツボを心得た作家選びが肝要となってくる。
また、コンテンツ消費のスピードが上がっていることがオタク業界全体の問題となってくる。
同人誌市場も例外ではなく、作品によってはコンテンツの“鮮度”がコミケとコミケの間、つまり約半年しか持たないというのがもはや通例となっている。こういった作品は瞬間風速的な勢いは非常に強いが、その分失速も早い。結果、ジャンルとして定着しないため、それ以上の展開は望めない。他方、ジャンルとして定着し人気が安定した作品は、市場を循環する。
オタク産業がヒット作品の存在に依存している以上、同人市場としての課題は次の巨大ジャンルの形成だといえる。
参考文献
メディアクリエイト(2007)『2008 オタク産業白書』株式会社メディアクリエイト