平成21年10月9日
同人誌市場(3)
106-106 奥出拓摩
オタクコンテンツ産業への影響(ゲーム・音楽)
同人ゲームの『月姫』を製作したTYPE-MOONは、『月姫』以降は有限会社ノーツを設立した。TYPE-MOONのブランド名はそのままに商業へとその活動の場を移し、その後18禁PCゲーム『Fate/stay night』を2004年に発表した。こちらは後に移植されたPS2版も15万本以上の大ヒットを記録した。『月姫』は二次創作のジャンルとして定着しており、現在でも『Fate』とともに高い人気を誇っている。
次に、PCやDTM(PC上での音楽制作)ソフトの高性能化、ネットの視聴によって盛り上がってきたのが、音系同人と呼ばれる音楽作品を扱うジャンルである。アニメのアレンジCD(二次創作)や自作の楽曲を収録したものなど、表現主体が音楽であるだけで、その様相は漫画を主体とした同人誌と大差ない。
音系同人でオリジナル楽曲を発表してきた霜月はるか(Maple Leaf)や片霧烈火(CLOSED/UNDERGROUND)は、美少女系PCゲームの主題歌を多く担当。その後、アニメソングを中心に扱うランティスやティームエンタテイメントから、ゲームやアニメのタイアップ曲を数多くリリースするなど、オタク産業を中心に活動している。
また、Sound Horizonも同様にオリジナルの楽曲を発表してきたサークルだが、2枚目のマキシシングル『聖戦のイベリア』が初動売上23,059枚(オリコン調べ)を記録し、またメジャーデビュー以降に開かれたコンサートツアーでは、2,000人規模の各会場のチケットを完売させていることから、確かな集客力をもっているといえる。
メディア展開としてコミカライズもされている。コミカライズを担当するのは元同人作家の桂遊生丸で、桂本人もSound Horizonのファンであることから、多様な解釈が可能なため難解であるといわれる原作への理解も深く、またそれゆえにファンからの評価も高い。
これに加え、『月姫』のテレビアニメをコミカライズした『真月譚 月姫』も同じ流れをもっている。連載当初、本編たるアニメそのものの評価はファンの間では高くなく、そのコミカライズも疑問視されていた。しかし同作の作画には『月姫』のアンソロジーコミックで定評のあった佐々木少年を起用した。アニメ同様『真月譚 月姫』と銘打ってはいるものの、原作とその派生作品を取り込んだオリジナル展開を採ったのが功を奏し、原作ファンには受け入れられている。
参考文献
メディアクリエイト(2007)『2008 オタク産業白書』株式会社メディアクリエイト