平成21年5月8日
DVD/CDパッケージソフト市場(2)
106-106 奥出拓摩
CDの市場動向
オタク産業においてCDの売上は伸びている。この背景には、@メディアミックスの容易さ、A“ネタ”的(話題性重視)消費の増加がある。
オタク産業におけるCDは、おおよそ3つに分類できる。A:アニメの主題歌やサウンドトラック、B:テレビゲームの主題歌やサウンドトラック、C:同人など出自がオタクコミュニティにあるアーティストの作品、である。アニメ、ゲーム、同人と多様なメディアと関連しているのが分かる。これは音楽出版の比較的リスクが低いことにもよるが、本質はCD媒体におけるメディアミックスの容易さにある。
音は抽象度が高いので表現の自由度が大きく、キャラクター、世界観、シーン、キャラクターの感情や関係、コミュニティなど、商品化の幅が広い。つまり、オタクが好むさまざまな“萌え”要素を商品として発売できる。また、音声そのものが“萌え”要素となる場合もある。コンテンツにおいて声優あるいは音声にハマっているユーザーを声優オタクと呼ぶが、もともとオタクCD市場は声優オタクによって支えられてきている。
他方、で“ネタ”的消費は増加している。これは、昔からある「ファン活動」の規模が拡大したものである。オタクに限らず一般にファンコミュニティは、あるコンテンツを共有するコミュニケーションが形成している。コミュニケーションには話題、つまり“ネタ”が必要である。
逆にいえば、コンテンツへの愛着がそれほどなくても、“ネタ”さえ共有できればコミュニケーションに参加できる。もともとは、自分の好きなコンテンツを他者と共有するためのコミュニケーションだったのが、最近ではコミュニケーションに参加するためにコンテンツを“ネタ”として消費するオタクも増加した。メーカーもこれを熟知しており、バイラル(口コミ)マーケティングとして活用する動きを見せている。
この現象はインターネットによってさらに加速している。匿名性があり場所や時間の制限がなく比較的緩やかなコミュニティ形成が可能となったからだ。ある“ネタ”がネットを騒がせば、参加するオタクが出現し、共有しようとする。その“ネタ”が商品保有によってもたらされる場合、当然、その商品が売れる。しかし、あくまで“ネタ”にしかすぎないので、高額のDVDではなく、安価なCDが売れるのである。また、“ネタ”の内容としても物語や世界観よりも、歌やダンスのほうが共有しやすい。
参考文献
メディアクリエイト(2007)『2008 オタク産業白書』株式会社メディアクリエイト